一次レベルの産院で遺伝子疾患や奇形症候群に対して最初のコミュニケーションを行う新生児科医と小児科医への勧告:6つのイタリア科学学会と4つの親の会から発行された合意内容群
Recommendations for neonatologists and pediatricians working in first level birthing centers on the first communication of genetic disease and malformation syndrome diagnosis: consensus issued by 6 Italian scientific societies and 4 parents' associations.
Serra G(1), Memo L(2), Coscia A(3), Giuffre M(4), Iuculano A(5), Lanna M(6), Valentini D(7), Contardi A(8), Filippeschi S(9), Frusca T(10), Mosca F(11), Ramenghi LA(12), Romano C(13), Scopinaro A(14), Villani A(15), Zampino G(16), Corsello G(4); their respective Scientific Societies and Parents’ Associations.
Author information:
(1)Department of Health Promotion, Mother and Child Care, Internal Medicine and Medical Specialties "G. D'Alessandro", University of Palermo, Palermo, Italy. gregorio.serra@unipa.it.
(2)Clinical Genetics Outpatient Service, Neonatology and Neonatal Intensive Care Unit, San Bortolo Hospital, Vicenza, Italy.
(3)University Neonatology Unit, AOU Citta della Salute e della Scienza, Turin, Italy.
(4)Department of Health Promotion, Mother and Child Care, Internal Medicine and Medical Specialties "G. D'Alessandro", University of Palermo, Palermo, Italy.
(5)Unit of Prenatal and Preimplantation Diagnosis, Thalassaemic Hospital, AO Brotzu, Cagliari, Italy.
(6)Unit of Obstetrics and Gynecology, Prenatal Diagnosis and Fetal Therapy "U. Nicolini", Buzzi Hospital, ASST FBF Sacco, Milan, Italy.
(7)Unit of General Pediatrics, Emergency and Acceptance Department, Bambino Gesu Pediatric Hospital, Rome, Italy.
(8)Coordinator of the Italian Association of Down People, Rome, Italy.
(9)President of the Italian National Association of Volunteers Cornelia de Lange, Pesaro, Italy.
(10)President of the Italian Society of Obstetric and Gynecological Ultrasound and Biophysical Methodologies, Parma, Italy.
(11)President of the Italian Society of Neonatology, Milan, Italy.
(12)President of the Italian Society of Perinatal Medicine, Genoa, Italy.
(13)Coordinator of the Clinical Genetics Study Group of the Italian Society of Human Genetics, Troina, EN, Italy.
(14)President of Italian Federation of Rare Diseases and of Williams Syndrome People Association, Rome, Italy.
(15)President of the Italian Society of Pediatrics, Rome, Italy.
(16)President of the Italian Society of Pediatric Genetic Diseases and Congenital Disabilities, Rome, Italy.
Ital J Pediatr. 2021 Apr 19;47(1):94. doi: 10.1186/s13052-021-01044-1.
背景:遺伝子疾患は患者やその家族の人生に関連する影響を与える慢性疾患である。米国やヨーロッパでは有病率として6千万人の患者数が推測されており、その75%は発育期にある。相当数の新生児が未熟児以外の理由でNICU(新生児集中治療室)に入院させられているが、遺伝子疾患を理由とする数は不明である。そこで通常は新生児科医が遺伝子疾患や奇形症候群の疑いを持って診断プロセスを開始し、診断を下してコミュニケーションを行う。数多くの調査によって、診断に関するコミュニケーション方法に対する出生前の満足度が低いことが示されている。不十分なコミュニケーションは子どもとその家族の健康や心理的あるいは社会的発達に対して短期的かつ長期的に悪影響を与える。我々はこの問題に対する勧告を書きあげて、6つのイタリア科学学会と4つの親の会とその内容を共有した。目的としては、両親に対して彼らの子どもの遺伝子疾患や奇形症候群の診断結果を伝えるという新生児科医にとって困難な課題をより容易に行うことである。
手法:我々は合意文書(consensus paper)の手法を用いた。最初に臨床的かつ科学的に現状の勧告のテーマ分野を共有することを基本とした学際的パネルを結成した。彼らは、今回の調査を主導した6つのイタリアの科学学会、すなわち小児科学会、新生児学会、ヒト遺伝学会、周産期医療学会、産婦人科超音波及び生物物理学的手法学会、小児遺伝性疾患及び先天性障害学会、の委員会によって推薦された。コミュニケーションプロセスのより深く包括的な展望を得るために、そして患者と彼らの家族に対するより良い臨床的管理状態に到達するために、4つの親の会の代表も招集された。イタリアダウン症候群協会、コルネリア・デ・ランゲ全国ボランティア協会、イタリア稀少疾患連合会、ウィリアムズ症候群協会である。彼らは2019年9月から2020年11月まで活動し、遺伝子疾患と最初に診断したことのコミュニケーションに関する勧告の合意に至った。
結果:一次レベルの産院で遺伝子疾患や奇形症候群に対して最初のコミュニケーションを行う新生児科医や小児科医への勧告に関する専門家の合意は最終案として文書化された。内容を効果的に伝えるプロセスとしての普遍的なコミュニケーション技術は存在しないが、新生児科医や小児科医が家族との関係性の中で利用可能ないくつかの適切な戦略的原則を確定しようとした。新生児科医が日々の治療実践において利用可能な簡易ツールを構築するために、家族との関係の様相に関連する基礎原理や重要な側面を表にまとめた。最終的に学会間共通文書としてまとめることができ、参加した各科学学会のウェブサイトで現在公開中である。
結論:新生児科医や小児科医は、必ずしも出生前に確認されるわけではないが、現状であれば出生前に診断できることも多い複雑な症候性症状を最初に目にすることが多い。彼らは、生物学的かつ臨床的な観点と合わせてコミュニケーションや生命倫理に関連する遺伝子疾患の側面を知る必要がある。これを総合することでこれらの患者に対する学際的な治療の礎石の概容を明らかにできる。この合意は遺伝子疾患や奇形症候群の診断に関する最初のコミュニケーションを行う際の方法に対する実践的な勧告になっている。提唱されているゴールは、情報を伝えるプロセスを容易にし、家族との関係構築における最良の実践方法を導入することである。医療者と患者/家族間の関係が良好であれば、子どもやその家族の健康状態を改善するができるとともに、両親との間の法廷闘争や保身的医療現象の減少にもつながる。
(2021年5月)
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