粘膜下口蓋裂を合併したWilliams症候群の一例



秋山 泰範 1)、外山 佳孝 2)、古川 博雄 1)、夏目 長門 1)、新美 照幸 1)、井村 英人 1)、秋山 友樹 1)、秋山 芳夫 1)、伊東 雅哲 1)、吉田 磨弥 1)、佐久間 千里 1)、森 明弘 1)
1)愛知学院大学歯学部附属病院口唇口蓋裂センター|愛知学院大学歯学部附属病院言語治療外来Cleft lip and Palate Center, Aichi-Gakuin ?
2)愛知学院大学歯学部附属病院口唇口蓋裂センターCleft lip and Palate Center, Aichi-Gakuin University Hospital ?
日本障害者歯科学会雑誌 42(3), 271-275, 2021

Williams症候群は,特徴的な顔貌,心血管系疾患,知的能力障害などを主徴とする症候群である。われわれは粘膜下口蓋裂と多数歯先天欠如,構音障害を併発したWilliams症候群を経験した。患児は9歳女児,Williams症候群と診断され構音の異常を指摘され当センターに来院した。Calnanの3徴候を認め,パノラマエックス線写真にて6歯の永久歯先天欠如を認めた。われわれは粘膜下口蓋裂による構音障害を疑い,鼻息鏡検査を行った結果,ブローイング時・構音時ともに明らかなくもりは認められなかったが不安定であり,鼻咽腔閉鎖機能はごく軽度不全と判断した。発達検査にて発達年齢が3歳程度であり当方の指示どおり話すことができなかったため,通常の言語治療ではなく付箋紙や風船などを用い呼気の動きを視覚的にフィードバックしたところ,訓練に興味を示し,構音の改善が認められた。これまでWilliams症候群の報告において口蓋裂についての詳細が明らかとなっておらず,本症例のみからは粘膜下口蓋裂が表現型の一つになりうるとはいいきれないが,今後,粘膜下口蓋裂を合併した症例が蓄積されれば,粘膜下口蓋裂が表現型の一つとなる可能性も否定できない。また,本症例のように発達年齢が低く,通常の言語治療ができない場合も,視覚的アプローチなど,患者が受け入れられる方法で訓練を行うことで治療が可能となる。また構音の異常が顕在化した場合は器質的異常を有している場合もあるため,早期に専門家に診断を仰ぐ必要があると考えられた。

(2022年3月)



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