ウィリアムズ症候群患者の思春期早発



堂地さんから論文の抜刷をいただきました。症例の部分だけを翻訳して掲載します。

(2000年10月)

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Precocious Puberty in a Williams Syndrome Patient

堂地 勉, Maruta Kuninori, Kuwahata Riki, 永田 行博
鹿児島大学医学部産科学婦人科学教室
Obstet Gynecol 1999 Nov;94(5 Pt 2):860
症例

1998年9月、9才の日本人女児が6ヶ月早く正常月経周期を示した。対象患者は臨月 で生まれ、出生時の体重は2490g、身長は45.5cmであった。初期発達時の特徴は、小柄な 体格と発達の遅れ(12ヶ月で這い、18ヶ月で歩いた)であった。3才4ヶ月でソケイヘル ニアの診断を受けた。同時に、大動脈弁上狭窄・妖精様顔貌・高カルシウム血症と精神遅 滞が認められた。7q11.23の位置にあるウィリアムズ症候群領域/エラスチン遺伝子の欠失 が確認されウィリアムズ症候群であると確定診断された。5才6ヶ月で、乳房と恥毛の発育 が見られ思春期早発を呈した。早期治療処置は行われなかった。対象患者は8才6ヶ月で 初潮を迎えた。9才で当院の外来診療を訪れた時点で、正常月経周期と第2次性徴が認めら れた。身長と体重はそれぞれ127cmと34kgであった。恥毛と乳房の発達はTanner IVレベ ルに達していた。骨年齢は14才であった。GnRH(100μg)を注射してから30分後、LHレベ ルは5.3から28.2mIU/mLに上昇し、FSHレベルは6.4から17.2mIU/mL(思春期レベル)に上 昇した。甲状腺ホルモンと副腎ホルモンは正常範囲にあった。CT検査の結果、脳や卵巣に 腫瘍は発見されなかった。腹部超音波断層写真により、子宮の大きさは50×30×35mmであ り、子宮内膜厚は9.9mmであった。対象患者は中枢性特発性思春期早発症と診断された。 強力で持続性のあるGnRHアゴニスト(agonist)で治療を継続しており、思春期の進展を止 められた。



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