非障害児と比較したウィリアムズ症候群児の視覚運動能力発達
The development of visual-motor abilities in children with Williams syndrome compared to non-disabled children
Angela Gosch 1), Rainer Pankau
1) Department of Pediatrics, Chldren-Albrechts-University of Keil, Keil, Germany
2) Department of Pediatrics, St. Bernward Hospital, Hildesheim, Germany
"Program and Abstracts" of 8th International Professional Conference On Williams Syndrome, Page 29.
緒言:
文献によれば、ウィリアムズ症候群の子どもには言語と視覚運動能力の両領域間の
解離が共通して見られると報告されている。この子どもたちは微細運動能力と視覚運動
協調が極度に困難である。ウィリアムズ症候群の子どもが持つ作画能力の質と発達につ
いてはあまり知られていない。次の2つの問いに答えることがこの研究の目的である。
- ウィリアムズ症候群の子どもは、何才で物(人物など)の絵を書き始め、時間の経
過と共にどのように発達するか。
- 彼らの絵の質は同年齢(作画能力的あるいは精神的)の障害を持たない子どもと異
なっているのか?
方法:
最初に質問に答えるために、2才から9才までのウィリアムズ症候群の子どもが書い
た183枚の「人物作画テスト(Draw a Person Tests:DAP's)」結果を評価した。DAPは子
どもたちの持つ一般概念の指標としての人物像の概念理解を評価する精神測定法である。
本研究においては、子どもたちの絵をジラー法(Ziler(1971,1996))で評価した。評価
基準リスト(どの詳細部分が書かれているかなど)に従うと、おのおのの絵の「作画年
齢」や精神年齢を計算できる。
次の質問に答えるために、44人のウィリアムズ症候群の子ども(平均年齢11.10才、
年齢範囲4.7才〜19才)のDAP'sと、44人の障害を持たない子ども(平均年齢5.6才、
年齢範囲4才〜7.7才)のDAP'sを比較した。性別および作画(精神)年齢(どちらのグ
ループも平均6.7才)を一致させた。50種の質規準リスト(体の一部が欠けている、比
率が違っている、非対称である、離れて配置されている、統合されている、感情表現な
ど)を用いた。
結果:
5才でウィリアムズ症候群の子どもの14.3%が人物を描く。7才から8才では60.5%
が、10才を過ぎると93.9%の子どもが人物を描ける。子どもの歴年齢の成長と共に作画
(精神)年齢も成長するが、平均に到達するのに6〜7年を必要とするなど顕著な遅れが
見られる。
同じ作画年齢にあるウィリアムズ症候群の子どもと障害を持たない子どものDAP'sを
比較したところ、ウィリアムズ症候群の子どものグループに落ち込み(pecurarities)
が見られた。胴体部分の詳細があまり描かれておらず、比率(頭部と胴体の比、足と胴
体の比など)が不正確であり、人物の姿勢にも乏しい。
考察:
全体的にこの知見は視覚運動統合の極端な遅れを再認させる。さらに、障害を持た
ない子どもとの比較において、ウィリアムズ症候群の子どもの視覚運動統合領域内にお
いても解離が見られる。
(2001年7月)
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