音楽療法により引き起こされる痙攣の検討
吉田由香, 杉山由利子, 安原昭博
1関西医大香里病院 小児科
日本小児神経学会 第44回日本小児神経学会総会
【目的】
発達障害児の療育を目的に行っている能動的音楽療法(MT)の個人セッション中に数名が痙攣を生じた。MT中に痙攣の生じやすい基礎疾患を検討し、さらにMTが脳波に与える影響について解明する。
【方法】
対象は 1歳から15歳の発達障害児61名で、週1回のペースで30分間のMTを行った。基礎疾患は自閉症27名、Down症候群10名、Rett症候群4名、Williams症候群4名、原因不明の先天性小頭症3名、てんかんを持つ発達遅滞児2名、その他11名である。痙攣のタイプや持続時間はMT中に記録されたビデオテープにより解析した。また脳波の変化について検討した。
【成績】
MT中に痙攣を生じたのは61名中5名(8%)であった。5名の内訳は自閉症1名、Rett症候群1名、原因不明の先天性小頭症1名、てんかんを持つ発達遅滞児2名であった。このほかにMTの期間中に痙攣を生じたのは4名で全例自閉症児であった。MT開始前の脳波検査では自閉症の27名中17名(63.0%)に脳波上で発作波が認められた。発作波を示す自閉症の場合はMTを行うにあたり注意深い観察が必要と考えられた。MT開始前の脳波所見では61名中11名に棘波が頻発し、31名に棘波が散発していた。棘波頻発群は11名中4名に痙攣を認めた。初回の脳波上では発作波が見られなかった19例中13例は発作波が陽性になった。この内1例はMT中に痙攣がみられた。
【結論】
脳波検査はMTに関連する痙攣を予測することが可能であり、障害児に対してMTを行うために脳波検査は必須であると考えらた。
2002年7月
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