ウィリアムズ症候群を持つ女性の2回の妊娠



Two pregnancies in a woman with Williams syndrome.

Mulik VV, Temple KI, Howe DT.
Wessex Fetal Medicine Unit, Princess Anne Hospital, Southampton University Hospitals NHS Trust, UK.
BJOG. 2004 May;111(5):511-2. Related Articles, Links

 ウィリアムズ症候群患者である女性の2回の妊娠とその結果について報告する。27歳の白人女性は2回目の妊娠12週に診察を受けた。彼女は2年前に早産をした後、ウィリアムズ症候群と診断された。

 一回目の妊娠は最初の診察では何も問題はなく、16週目にエコー検査を行ったが形態に異常はなかった。27週目で痙攣が起きたが、他に子癇前期の兆候はなかった。一回目のMRI検査で彼女の脳幹の周囲に少量の出血の疑いがもたれたが、脳血管造影の結果は正常だった。再度MRI検査を行い、中脳の左側に密度が異常な小領域が発見されたが、脂肪分を抑制する(fat suppression)ことで消滅したため、小さな脂肪腫あるいは類皮だったと考えられる。このため痙攣は偶発的な兆候であり、治療は不要と判断された。

 この女性の血液型はRh-であり、分娩前出血の後にKleihauer検査を行ったところ強度の陽性であった。当初は経胎盤性出血が原因であると考えられたが、妊娠後の検査で胎児ヘモグロビンが残留していることがわかり、Kleihauer検査結果が擬陽性になったと考えられる。

 27週目に早期分娩になり1,075gの男児を出産したが、複数の異常があり呼吸困難症候群と未熟が原因で生後9日目に死亡した。死後、喉頭裂(laryngeal cleft)、気管・食道瘻孔、十二指腸閉鎖、馬蹄形腎、心室中隔欠損が判明した。この一連の症状はVATER associationを暗示している。この時点で遺伝相談が実施され、ウィリアムズ症候群染色体領域(Williams Syndrome Chromosome Region:WSCR)プローブを用いたFISH検査で7q11.23領域の欠失が確認されたため、この母親はウィリアムズ症候群と診断された。子供の核型は正常であり、先天的異常の原因は見つからなかった。母親は妊娠前には概して健康であった。彼女はウィリアムズ症候群に典型的な顔貌と学習障害を持っていた。特殊学校に通っていたが、現在は配偶者と一緒に独立して生活している。

 2回目の妊娠のときにはウィリアムズ症候群であることがわかっていたので高リスク出生前検診を受けた。検査には心エコーも含まれていたが異常はなかった。胎児にウィリアムズ症候群が遺伝しているかどうかを確認する絨毛生検を薦めたが断られた。20週目で胎児の異常を調べるため胎児心エコーを含む超音波検診を行ったが、異常はみられなかった。妊娠期間を通じてカルシウムと腎臓機能を注意深く監視し、出生前期間はまったく異常はなく、39週目になって一時的に血圧が高くなったが、タンパク尿は出ず生化学検査も正常であった。

 出産予定日に胎児心拍陣痛図に問題が見られたので陣痛促進剤が使われ、経膣分娩で2.4Kgの男児が生まれた。FISH検査の結果、男児の7q11.23領域の欠失が確認されたためウィリアムズ症候群と診断された。

 生後1ヵ月の時点で、胃腸からの逆流や両側鼠径ヘルニアがあったが、体重は10から25パーセンタイルだった。中程度の大動脈弁上狭窄があるため、循環器科で継続的に検査が行われている。

(2004年6月)



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