Williams症候群を伴った再発性完全直腸脱に対するDelorme法術の経験
岩井 潤、東本 恭幸、志村 福子、副島 博子、江東 孝夫
千葉県こども病院外科
日本小児外科学会雑誌 第38巻 3号 2002年5月 673ページ
【目的】
小児の難治性直腸脱では、その背景に排便行動障害や排便指導の困難さが認められることがある。特に精神発達遅滞を伴う場合はその傾向が強いため、周術期や術後長期排便管理の困難さが予想される。このような症例の術式については、その効果のみならず、手術侵襲が強すぎないことや術後排便障害が少なく管理の容易な術式の選択が必要である。
今回、Williams症候群を伴った再発性完全直腸脱症例に対し、以上に述べた観点からDelorme法手術を施行したので報告する。
【症例】
17歳の女児、再発性完全直腸脱の加療目的で来院。4歳頃より直腸脱が出現、6歳時に他院でGant三輪手術を受けるが早期に再発した。最近出血と環納時の痛みが出現し来院した。便汚染や失禁はなかった。また、患児はWilliams症候群のため、軽度〜中程度の精神発達遅滞(IQ=55)を認めた。抜毛症・トイレットペーパーを食べる癖がある。診察上、5cmの全周性直腸脱に痔核を伴い、肛門はやや弛緩していた。
【結論】
Delorme法手術は侵襲が少なく一定の効果が期待できる。また、周術期管理が容易で術後排便機能障害が少ないので、精神発達遅滞があり、長期の排便管理が困難と考えられる患児において有効な術式と考えられた。
(2005年11月)
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