ウィリアムズ症候群:臨床症状と分子的背景
これまでウィリアムズ症候群の発生頻度は2万回の出産に一人といわれてきましたが、最近の研究によれば「7500回の出産につき一人」だそうです。これまでウィリアムズ症候群自体の認知度が低いことや、横断的な研究が行われていなかったため、発生頻度が少なめだったと思われます。
この発生頻度からすると、日本には1万6千人程度(人口を1億2千万として)、世界中には87万人程度(人口65億人として)の仲間がいることになります。
(2006年3月)
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Williams syndrome: its clinical aspects and molecular bases.
Antonell A, Del Campo M, Flores R, Campuzano V, Perez-Jurado LA.
Hospital Universitari del Mar, 08003 Barcelona, Espana.
Rev Neurol. 2006 Jan 7;42 Suppl 1:S69-75.
導入と発達:
ウィリアムズ症候群は出生7500回に一人の割合で発生する発達障害である。表現型は特徴的な顔貌・軽度から中程度の精神遅滞・一様ではない全般的認知障害(精神運動と視空間の統合などの分野における問題と言語や音楽性など比較的保存されているその他の分野)・友好的な性格・時として乳児期の高カルシウム血症・大動脈弁上狭窄などの脈管障害を特徴とする。ウィリアムズ症候群は染色体領域7q11.23にある1.55Mbの超顕微鏡的欠失が原因であり、そこには26〜28個の遺伝子が含まれる。ほとんど同一の配列間での誤整列と、それに引き続いて起こる不等組み換えが変異メカニズムである。この相互再配列によって生み出されたもう一方の染色体ではこの領域が重複しており言語特異的障害の原因となる。
結論:
表現型を正しく記述し、非典型的な欠失と典型的な欠失を有する患者の切断ポイントを正確に分析することで臨床と分子の相関関係を確立すること、そして動物モデルを設計し試験管内で欠失領域にある遺伝子の機能を研究することは、各遺伝子が表現型に与える影響を正確に決定するために、さらに、患者の病因や生理病理を知り治療法を確立させるためにとても重要である。
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