高カルシウム血症をどう考えるか
古橋 協、大関 武彦
浜松医科大学小児科
小児科 第43巻 第6号、707-713ページ(2002年6月)
小児期における高カルシウム(Ca)血症は全身倦怠感、成長障害や便秘などの一般臨床においてよく遭遇する症状を呈する。よって、非特異的な症状のある場合には必ず血清Ca値の評価はなられなければならない。また、重症の高Ca血症におては意識障害を呈することもある。高Ca血症が存在した場合その原因疾患を十分に検索し、対処していく必要がある。本稿においては新生児期から小児期における高Ca血症の識別診断についてこれまでの報告も全般的に考察した。
中略
W.乳児特発性高Ca血症、Williams症候群
乳児特発性高Ca血症は1952年に報告された。当時の報告において英国におけるミルクに添加された過剰のVit.Dが原因とされた。このような症例は英国においてその後のVit.Dの除去に伴い減少した。しかし、その後にVit.Dの過剰摂取によらない同一な症状の報告が相次ぎ、本症の原因は腸管からのCaの吸収が亢進しているためとされ、Vit.Dに対する過敏性が原因の一つと考えられている。
症状として高Ca血症、体重増加不良、便秘、嘔吐、筋力低下、高血圧の症状を呈し精神発達遅滞も軽度から高度の報告がある。高Ca血症が続くと全身の骨硬化、腎石灰化などを呈し腎不全の報告もある。
低出生体重、特異な顔貌(いわゆるelfin face)、弁上性大動脈狭窄などの心血管系の異常、精神運動発達遅延を特徴とするWilliams症候群におても、頻度は高くないが高Ca血症を呈することが知られており、同一疾患とみられている。高Ca血症は1〜2歳ころに自然軽快する、elastin遺伝子の存在する7番染色体短腕部の欠失が確認される。
(訳者注:elastin遺伝子は7番染色体短長腕部に存在する。上記は記述ミスと考えられる)
(2006年4月)
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