Williams症候群の患者に生じた乳児期繊維性過誤腫
本論文の内容は「2007/04/11-13 第50回形成外科学会総会(東京)」において「williams症候群の患者に生じた発毛を伴う乳児期繊維性過誤腫の1例」というタイトルでも発表された。
(2007年11月)
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Fibrous hamartoma of infancy in a patient with Williams syndrome.
Togo T, Araki E, 太田 正佳, Manabe T, 鈴木 茂彦, Utani A.
Br J Dermatol. 2007 May;156(5):1052-5. Epub 2007 Feb 27.
乳児期繊維性過誤腫は繊維組織の原形質類器官パターン、原始的間充織、脂肪組織で構成される良性の軟部組織腫瘍である。ウィリアムズ症候群は、循環器系や中枢神経系を含む発達障害である。希少病であるウィリアムズ症候群はエラスチン遺伝子等の26〜28個の遺伝子領域を含む1.55Mbにわたる染色体7q11.23部位の半接合欠失を原因とする。エラスチン遺伝子の欠失は大動脈弁上狭窄の原因であるとともに、皮膚の柔らかい生地や易移動性にも影響を及ぼしている。本稿でウィリアムズ症候群患者に生じた乳児期繊維性過誤腫の症例を報告する。我々が知る限りこれらの2つの疾病の合併はこれまで報告されていない。
ウィリアムズ症候群を有する5歳の男児が、出生時から背中に生じていた無症候性皮膚病変を主訴として紹介されてきた。検査の結果、楕円形でごく薄い淡紅色、その上にはまばらな発毛が認められる限局性の弾性柔結節が、背中の上部中心線上に認められた。この結節の大きさは、直径55mm、高さ22mmであった。結節の中央部は茶色がかっている。病変部全体は指で押すと容易に陥没する。
患者は成長遅滞、特徴的な「妖精様」顔貌、精神遅滞、外交的性格などからなる精神的障害、しわがれ声等共に大動脈弁上狭窄があることから、以前からウィリアムズ症候群との診断を受けていた。この診断は染色体7q11.23のウィリアムズ症候群責任領域(WSCR)に存在するエラスチン遺伝子の欠失を確認するFISH分析法で確定された。患者の全身の皮膚は柔らかい生地を示し、しっかりした一貫性を欠き、異常なほどなめらかであり、皮下組織からの易移動性を示すが、異常な透明度、挫傷、瘢痕、過度の伸展性は認められない。これらの所見はウィリアムズ症候群の典型的な皮膚変異と同等である。
周囲の正常な皮膚5mmを含めて結節部分を完全切除した。
(以下略)
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