心血管異常の既往を持つWilliams症候群患者に対する麻酔経験
工藤 隆司、木村 太、石原 弘規、廣田 和美
弘前大学大学院医学研究科麻酔科学講座
日本臨床麻酔学会誌 Vol.28, No.6 2008年 S247ページ
Williams症候群は第7染色体長腕の微小欠失による遺伝子症候群で、小妖精顔貌、心奇形、精神遅滞、高カルシウム血症を主症状とする稀な疾患である。
【経過】
患者は7歳男児。橈骨癒合のため、右橈骨骨切術、後骨間動脈脂肪弁挿入術が予定された。既往症に大動脈弁上狭窄症候群、肺動脈閉鎖、川崎病による冠動脈瘤があったが、4日前の術前心臓検査では心機能はすべて正常範囲内で、本人の心症状もなかった。セボフルランで麻酔導入後、静脈確保し、マスク換気ができることを確認した後、ベクロニウムで筋弛緩を得た。挿管困難に対する十分な準備を行ったが、Cormack分類2で、通常の咽頭鏡による気管挿管が可能であった。麻酔維持はプロポフォール、フェンタニル、ケタミンによる全静脈麻酔で、4時間以上の手術となったが問題なく終了した。
【まとめ】
Williams症候群の麻酔管理上の問題点として、挿管困難、心血管異常による突然死、精神遅滞、電解質異常などがあるが、まだあまり認知されていない疾患であるため、麻酔導入時に重篤な状態となって、初めて気付かれる場合もある。術前に診断されている場合、気道評価、循環器系検査などを行って、慎重に全身管理する必要がある。
(2009年2月)
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