Williams症候群の自然歴−主に小児期における臨床像
日本小児科学会雑誌 101巻8号 ページ 1314−1319 1997年8月
森本 雄次(国立善通寺病院小児科)
近藤 郁子(愛媛大学医学部衛生学)
大橋 博文・金 慶彰(埼玉県立小児医療センター遺伝科)
永井 敏郎(東京都立清瀬小児病院)
杉江 秀夫・伊藤 政孝(浜松市発達医療総合センター小児科)
塚原 正人(山口大学医療技術短期大学部)
長谷川 知子(静岡県立こども病院遺伝染色体科)
福嶋 義光(信州大学医学部衛生学)
外木 秀文(北海道大学医学部小児科)
桑島 克子(茨城県立こども福祉医療センター小児科)
升野 光雄・黒木 良和(神奈川県立こども医療センター遺伝科)
日本人のWilliams症候群の自然歴を明らかにするために、臨床症状をもとに診断された
本症候群36例の臨床経過を検討した。対象は2才から21才までの36例(男性18例と女
性18例)で、共通する臨床症状は、低身長、精神運動発達遅滞、妖精様顔貌、人なつっこ
い性格と心血管系異常であった。新生児早期に診断された例は心雑音で発見され、大動脈
弁上狭窄、末梢性肺動脈狭窄が特徴的で88.9%にみられたが、手術を必要とした例は2例
のみであった。また、乳児期早期の高カルシウム血症は2例であった。乳児期以後は発達
遅滞で受診することが多く、発育歴として乳児期は不機嫌、哺乳不良、物音に過敏など育
てにくい傾向が見られる。2才前後に歩行可能となり、意味のある言葉を話し始め、妖精
様顔貌、人なつっこい性格が顕著となる。IQ,DQは平均60(41−83)であった。体格
は生下時より小さく、男性の最終身長は155−160cm、女性は145−150cmであ
った。他の合併例として、乳児期はそけい(原文は漢字)ヘルニア、その後は、心血管系
以外の血管系異常、歯科、眼科、整形外科的異常に注意を要する。
27例はエラスチン遺伝子領域のDNAプローブを用いたFISH法による遺伝子診
断を受け、26例(96.3%)に遺伝子欠失が認められた。患者の約半数は普通学級で教育を
受けているが、成人期Williams症候群患者の完全自立は困難である。しかし、確定診断に
より早期介入が可能となり、精神発達遅滞の程度から、臨床症状の特徴を生かした早期か
らの療育法の確立することが重要と考えられる。
本文からの追加情報としては、次のようなものがあります。
- 精神運動発達歴を載せていて、平均年齢として、座位10.0ヶ月、四つ這い12.2ヶ月、
独り立ち 17.2ヶ月、一人歩きは14ー36ヶ月と個人差を認めた。 意味のある単語の獲
得は12ー48ヶ月、と個人差が大きかった。
- 日本人患者では小児期全般において身長の伸びが少なく、二次性徴時のスパートが乏
しい傾向がある。−2SD以下の低身長を伴う例は少ない。
- WS患者の知的障害は軽度で、周囲への関心は強く、人見知りをしないなど人との接
触は積極的。
以上です。
(1998年1月)
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