遺伝発達遅滞症候群 - 行動と介入に関する新しい視点



アメリカのウィリアムズ症候群協会(WSA)の会報に掲載されていた記事で、アメリカで 出版された書籍に関する解説が書かれています。

(2001年10月)

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Genetics and Mental Retardation Syndromes
A New Look at Behavior and Interventions

By Elisabeth M. Dykens, Robert M. Hodapp & Brenda M. Finucane
"Heart to Heart", Volume 18 Number 2, June 2001, Page 27

「Paul H. Brooks Publishing Company」から出版されたこの本は、ダウン・ウィリア ムズ・脆弱X・プラダーウィリィという4つの症候群についての詳細と、それ以外の5つの 症候群についての簡単な解説が書かれている。

ウィリアムズ症候群の章は、包括的で様々な事柄が吟味され、遺伝子と身体的特徴・ 診断・医学的特徴・認知と言語・強い部分と弱い部分・神経学的相関などが述べられてい る。子ども及び大人の適応機能・社会的及び人格的機能・精神病理学・介入の意味・不適 応行動及び社会感情的行動・家族としての考慮点などにも多くのページが割かれている。

他の症候群に比べて、ウィリアムズ症候群は認知科学者や言語学者や神経心理学者な どから多くの注目を受けていると著者らは述べている。しかしそれとは対照的に、ウィリ アムズ症候群における適応機能や不適応機能、あるいは過度に社交的な人格に関する調査 研究は比較的少ないとも述べられている。

この章の結論のページには不適応行動や社会感情的行動に関する考察が述べらていて、 特に興味深い。ウィリアムズ症候群の子ども及び大人はコミュニケーションや社会性に関 する適応機能は比較的優れている一方で、日常生活に必要な技能には比較的問題が多い。 「ウィリアムズ症候群の人の多くに適応能力の発達の遅れが見られることは、言語能力や 他人に対する興味や社会的見当識が比較的優れている見地からすると驚くに値することで ある。」

同様に、最初にウィリアムズ症候群の人が持つ社交性を目の当たりにした研究者は、 多くの長所が目に入る。しかし、その魅力的な「見かけ」の裏側を覗き見た後には、ウィ リアムズ症候群の社交性や行動が非常に脆弱であることに気が付く。さらに、ウィリアム ズ症候群の不適応行動を研究してみると、注意力散漫・衝動性・多動・かんしゃく・強迫 観念・恐怖・刺激過敏・不安症などの問題がウィリアムズ症候群の人の50%以上に見られる ことが判明した。「ウィリアムズ症候群は、遺伝子・神経・環境のそれぞれが一般の人々の 恐怖症発現にどのような影響を及ぼしているかについて、さらに詳しく理解するためのモ デルとなる病気である。」と、研究者たちは考えている。

最後に、ウィリアムズ症候群は認知や言語については非常によく研究されている一方 で、適応能力や社会的能力及び教育・職業・人格的調整との関連、不安・恐怖・恐怖症に 対する適切な治療や介入方法、遺伝子と脳と行動の関連、認知言語能力に関する長所を利 用し弱点を最小化することを目的とした特別教育カリキュラムの効力など、他の行動面の 多くについてはまだ研究されていない。これからの研究はこれらの点を明かにしていくこ とが必要である。



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