視空間認知障害をもつ児のコンピューター学習支援 〜 ウイリアムズ症候群をモデルとして
柳橋 達彦、小崎 健次郎、高橋 孝雄
慶應義塾大学医学部小児科学教室
日本小児科学会雑誌 第115巻第2号 353ページ(平成23年2月)
【背景】
視空間認知障害をもつ児にとって、反復書字訓練の負担は大きく、非効率的である。それに代わる日本語学習法として、視聴覚刺激を複合的に用いたコンピューター教材が注目されている。ウイリアムズ症候群(WS)は7番染色体長腕の部分欠失を原因とし、心疾患、高カルシウム血症、視空間認知障害を呈する。また学齢期に読み書きに困難を生じる例が多く、効率的な日本語学習法の開発が切望されている。
【方法】
WS患児6名(4〜17歳)を対象として、標準化知能検査、視空間認知検査、語彙検査、読み書き検査を実施した。各患児のレベルに合わせた問題をコンピューターで呈示し、マウスで回答する教材を約20分間行った。学習前・後の読み書き検査で学習の短期的効果を評価した。
【結果】
全例で精神遅滞を認め(IQ41〜71)、言語性課題に比べ視空間認知課題が有意に低く、特に微細運動を伴う課題の得点が低かった。絵を見て答える語彙力検査に比べ文字の読み書き課題の得点が低かった。文字や図形の模写が困難で、特に構成要素の配置に問題があった。全例で学習を完遂し、コンピューター学習後に読み書きの得点が有意に上昇した。
【結語】
書字訓練を伴わないコンピューター学習によって、文字の読み書きを学習した。今後、長期的効果の評価が必要であるが、WSをはじめとする視空間認知障害を伴う読み書きへ障害への日本語学習にコンピューター教材が有効と考えた。
(2011年5月)
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