言語発達に関する研究について



アメリカで運営されているウイリアムス症候群に関するメーリングリストに、下記 のような投稿がありました。 Salk Institute のDr. Ursula Bellugi はウイリアムス症候 群の言語発達に関する研究では有名な女性です。Wendy Jones さんの許可のもとに翻訳し ました。

(1997年8月)

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私は Wendy Jones です。カリフォルニア州にある Salk Institute のDr. Ursula Bellugi 下で研究している研究者です。私達は、ウイリアムス症候群の人達に関して、い ろいろな研究を行なっています。その中のひとつに、ウイリアムス症候群の子供達の初期 の言語発達に関する研究があります。何語くらいの言葉を話したり理解しているか (MacArthur Communicative Development Inventory、あるいは省略して CDI と呼ば れています)についての両親への質問を通して、ウイリアムス症候群の子供達 70人以上 の言語的発達を追跡しています。このプロジェクトの最初の論文が印刷中で、来年中には 発行されます(研究内容が出版されるのには、大変時間がかかります!)。 論文では、ウ イリアムス症候群の子供達が、同じくらいの年齢のダウン症候群の子供達と比較されてい ます。著者達は、両グループの子供達の最初に単語を話し始める時期が著しく遅れること に気付きました。この遅れは平均約1.5年です。つまり、ウイリアムス症候群やダウン症 候群の子供達は、「普通」より平均1.5年ほどしゃべり始めるのが遅れるということです。 興味深いことは、両グループとも同じくらいの遅れがあることです。というのも、もう少 し大きくなった子供達の言語に関しては、両グループで非常に大きな相違が見られるから です。

2語以上の言葉を話し始めた時、あるいはその直後に、この2つのグループは大き な違いが見え始めます。言い換えると、言語において文法が一旦機能し始めると、ウイリ アムス症候群の子供達は急速な進歩を見せる一方で、ダウン症候群の子供達は遅れを取り 戻せないということです。何歳くらいからこのような現象が出始めるか、という事に関し ては議論の必要がありますが、敢えて言うとしたら平均的には4才になってからと思われ ます。

普段はあまり話題にされないこと(本来議論する必要があります)ですが、同じウ イリアムス症候群の中でも違いがみられます。残念ながら、現在までに公表されているほ とんどの論文は、研究データの平均値をもとにした「代表的」なウイリアムス症候群の子 供について書いてあります(先程述べた論文についても同様です)。しかし、みなさんも ご存じのように、ウイリアムス症候群の子供はそれぞれすばらしくて個性があり、特定の 一人についての記述は別の子供にはあてはまりません。

先程述べた言語に関する論文を一目見ても、2才半から5才になるのに、0語〜5 0語しかしゃべらない子供が何人かいます。最近このメーリングリストで話題になった子 供達と同じで、自閉傾向がある可能性があります。しかし、理由はよくわかりませんが、 6才から7才まで話しをしなかったのに、一度しゃべり始めると上手に話せるようになっ た子供の家族を何家族も知っています。繰返しになりますが、これは平均値の回りに大き な「ばらつき」があることを示しています。反対側にも同様にばらつきます。つまり、7 〜8ヶ月で最初の言葉を話した、という家族も何家族かありました。

私は今、ウイリアムス症候群の言語発達に関する「平均」曲線を作成するプロジェ クトにかかわっています。いつの日か、ウイリアムス症候群の子供を診察したときに、そ の子の年齢と何語くらいの単語を話せるか(あるいは理解できるか)という事実から、そ の子がウイリアムス症候群の子供としてどのくらいの発達度合なのか、をご両親に伝えら れるようになりたいと思っています。

長くなってしまってごめんなさい。このメールが皆さんのお役に立つことを祈って います。もっと聞きたい事がありましたら、気軽に電話をして下さい。

Wendy Jones

The Salk Institute for Biological Studies
La Jolla, CA
(619)453-4100 x1416


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