ウイリアムス症候群における言語的乖離:
オンライン及びオフライン課題を用いた文法理解能力評価



Linguistic dissociations in Williams syndrome:
evaluating receptive syntax in on-line and off-line tasks.

Karmiloff-Smith A, Tyler LK, Voice K, Sims K, Udwin O, Howlin P, Davies M
MRC Cognitive Development Unit and University College, London, UK.
annette@cdu.ucl.ac.uk
Neuropsychologia 1998 Apr;36(4):343-351

ウイリアムス症候群(WS)は遺伝子に起因する神経発達障害であり、非言語的能力に重 い障害があるにもかかわらず、言語能力は比較的維持されている。しかしながら、ウイリ アムス症候群の言語能力がどの程度維持されているかについては議論がある。論点は、ウ イリアムス症候群の文法(syntax)は損なわれていないが、構文意味解析(lexico- semantics)と形態的機能分析(morphological feature analysis)は障害を受けているとい う点である。我々はこの見方に関して疑問を抱いており、いろいろな構文構造をテストす るための2種類の課題を用いて、ウイリアムス症候群の構文理解力を評価した。2つの課 題は、オンライン単語聞き取り課題(on-line word monitoring task)とオフライン絵指示 課題(off-line picture-pointing task)である。ウイリアムス症候群のオフライン課題の 成績は一般的に低い。対照的に、オンライン課題の成績はかなり高く、この結果から、ウ イリアムス症候群の構文理解のどの機能が維持されていて、どの機能が損なわれているか に関して正確に確認することができた。ウイリアムス症候群の被験者は補助マーカー (auxiliary markers)や句構造ルールの違反については敏感であるが、サブカテゴリー制限 違反については感度が無かった。この感度が無いという点は、正常な若者及び年配のどち らの対照群とも類似していない。今回の研究の結果は、構文意味解析や形態的機能分析に 制限を与えないが、特定の文法構造の処理にも影響を及ぼしているというような、ウイリ アムス症候群の言語内にある乖離の存在を示唆している。議論した結果、ウイリアムス症 候群の文法も損なわれており、ウイリアムス症候群の言語は通常の獲得方法ではなく、外 国語を学ぶ方法に似ていることが判明した。

(1998年7月)



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