ウィリアムズ症候群患者の会話能力



Conversational abilities of individuals with Williams syndrome

Vasna Stojanovik, Dr Mick Perkins, Dr Sara Howard
Department of Human Communication Sciences, University of Sheffield, UK
"Program and Abstracts" of 8th International Professional Conference On Williams Syndrome, Page 56

ウィリアムズ症候群を対象とした研究は文法構造のような語形や統語に関する言語能 力に集中している。一方、会話環境におけるウィリアムズ症候群児の話し言葉を取り上げ た研究はほとんど見当たらない。

アドウィンとユール(Udwin and Yule,1990)は、20人のウィリアムズ症候群患者の会話 を調査し、発語や単語の数・発語に子どもっぽい慣用句や決り文句が含まれる割合・不適 切な個人的体験や社会的言葉使いや慣用句及び間投詞・言葉につまった割合等の総数を計 測した。ウィリアムズ症候群の被験者は「カクテルパーティ様会話(cocktail party speech)」グループ(彼らは残りのグループに比べて、会話の量・発語の複雑さ・社会的言 葉使いや決り文句の量・コミュニケーション機能の複合度合い等が顕著に多い)と、「非カ クテルパーティ様会話」グループに分類された。両者は、過去の出来事の想起・2つの出来 事の時間的な結合・理由・説明・汎化と定義・推論と参照などの複合言語機能の使い方も 異なっていた。

しかし、仮説として分類されたウィリアムズ症候群の2つのグループ間に存在する違 いが、例えば参照特定機構(reference-specifying mechanisms)の利用・話題の維持・会話 の分析(conversational breakdowns)など、何処に存在するのかは明らかになっていない。 従って本研究では、ウィリアムズ症候群の子どもの言語が会話環境において「奇妙である」 あるいは「普通ではない」と言われる理由を明らかにするため、ウィリアムズ症候群患者5 人の会話能力を交換構造と発語順番(exchange structure and turn taking)について定量 的かつ定性的に分析した。分析にはアダムスとビショップ (Adams and Bishop, 1989)及び ビショップとアダムス(Bishop and Adams, 1989)によって提案されたフレームワークを使 用した。ウィリアムズ症候群患者の会話特性がどの程度症候群特異であるかを明らかにす るために、言語特異障害(Specific Language Impairment)患者5人との比較も行った。本 研究成果はいま行われている言語と認知の分離に関する議論という観点で検討されている。

(2001年4月)



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