ウィリアムズ症候群に特徴的な認知と言語



正高 信男
京都大学霊長類研究所
月刊「言語」 31(7):30-41(2002)

一般的認知能力は劣るもものの、言語能力はそれとは独立して健常であると言われるウィリアムズ症候群。しかし、巧みに仕組んだ実験により、言語能力と認知能力とは不可分であることが判明した。そこから推測される脳内の認知メカニズムとは。

健常者を対象とする限り、言語能力と他の一般的認知能力は初期形成過程においても、比較的短期間のうちに並行して発達するのが通常であり、両者の独立性のいかんの検討は、事実上大変むずかしい。そこで最近、発達障害の研究が脚光を浴びるようになってきている。一般的認知能力は劣るにもかかわらず、言語的側面に限って健常である症例が注目を集めつつある。とりわけ言語能力のモジュール性を主張する研究者が、自説を裏づける証拠と主張しているもののなかで、もっとも説得的とされているのがウィリアムズ症候群(Williams syndrome)と呼ばれる遺伝的発達障害の症例である。

(2004年6月)



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