言語習得における身体性とモジュール性
―聴覚障害とウィリアムズ症候群の場合の比較を通じて―
正高信男
(京都大学霊長類研究所)
ベビーサイエンス 2001.vol.1(2002年6月発刊)
言語能力が、一般的認知能力からどの程度に独立して機能しているのかを検討する目的で、聴覚障害とウィリアムズ症候群の場合における、言語習得過程の特徴の比較を試みた。聴覚情報を欠いた場合でも、ヒトの脳には発声系に依存しないで言語表象を産出する能力が遺伝的に備わっている一方で、視空間的認知能力に関する一般的障害が、言語習得のパターンを非常に特殊な形式にすることが、明らかとなった。神経心理学的な言語情報処理のモデルに即して、従来の知見を参照したところ、感覚入力の音韻性符号化とそのリハーサルを実行する過程が、重要な役割を果たしていると想定される。また、そのメカニズムは必ずしも特定のモダリティに限られるわけでもなく、今まで考えられていた以上の可塑性を有している可能性が予想され、これからの課題が指摘された。
(2005年4月)
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