Williams症候群の女児にみられた読字困難と書字困難の特徴



納富 恵子
日本LD学会大会発表論文集 11巻 2002.9.22-23、158-161

観察された状態の変化

文字に興味を示さないことから、大学付属障害児治療教育センターで相談開始。母親指導を中心に助言を行った。5歳7ヶ月時のWISC-Rの評価はVIQ 103、PIQ 97、FIQ 100であり、知能は正常範囲であったが、知識・算数・積み木模様・迷路が低く個人内差が顕著であった。A子さんは社交性に富み話は得意であったことから、日常生活のなかであったことを母親と文章化し話しながら、絵日記形式で、文字でなくとも○などの記号でよいので書くことを目標にした。その結果、自分の名前も読めない状態だったが、書くことやひらがなに興味がもて、ひらがなの書字の練習をすすんでするまでになった。また、大きな文字であれば、なぞることができるようになった。しかし小さな文字は集中していないとなぞれなかた。小児の専門病院の眼科や循環器内科で診察はされていたが、WSの診断はなされていなかった。

小学校1年の夏休みには、母親とともにひらがなの練習を行い、ひらがなの読み書きについては可能になった。

小学校1年時の評価では、WISC-R・ITPA言語学習能力診断検査・絵画語彙検査・SM社会能力検査・読み書き検査の結果から、視覚性読み障害・再視覚化の障害と判断した。小学校では、担任の配慮で毎朝絵本の読み聞かせなどがクラス全体になされた。

小学校2年時には、WISC-RのFIQ値の低下とともに、非言語性学習障害の要素があることが疑われた。フロスティッグ視知覚検査などから、視覚的な弱さが学習を妨げていること、量的な把握や概念化や論理操作という抽象的思考力・空間認知力にも問題があることがわかった。

小学校3年時には、これまでの評価とともに、実用的なお金の計算、繰り上がりのある1桁の足し算・掛け算に対して、得意分野である暗記を中心に、算数に対する苦手意識を軽減していった。

小学校4年時の状態は、学年では担任の配慮でクラスにはなじんでいるが、特定の友人はおらず、年下の子供と遊んでいると報告された。

(2006年1月)



目次に戻る