ウイリアムス症候群1症例の学習能力
川崎 美香、森 壽子、藤本 政明
藤本耳鼻咽喉科クリニック
北海道医療大学言語聴覚療法学科
音声言語医学 Vol 44 No 1、2003年1月、53-54ページ
T.目的
Orlee Udwin & William Yuleらによると(INFANTILE HYPERCALCEMIA & WILLIAMS SYNDROME. 富和清隆ら訳、1997)ウイリアムス症候群では、学習障害を生じるといわれている。それを予防するために、就学前の4年8ヵ月間(1歳10ヵ月〜6歳6ヵ月)、言語指導を行い一定の成果を得たので報告する。
U.症例と経過
T.M.(男児)。1歳6ヵ月時、T市民病院にて染色体分析の結果、ウイリアムス症候群と診断された。1歳10ヵ月時、言葉の遅れを主訴に藤本耳鼻科を紹介受診。診察時(1歳10ヵ月)、乳幼児分析的発達検査(旧円城寺式)にて、平均1歳2ヵ月、DQ69、手・知的・情意は9ヵ月、言語は約6ヵ月の遅れを認めた。田中ビネー知能検査、大脇式知能検査は測定不能。ウイリアムス症候群で生じる学習障害予防を目的として、以後、積極的言語指導を行った。第1段階(1歳10ヵ月〜4歳0ヵ月)では、動作模倣による言語理解と音声表出促進指導を行った。その結果、4歳0ヵ月時には、言語・情緒は年齢相応となった。第2段階(4歳1ヵ月〜6歳6ヵ月)では、意図的な読み書き指導を行った。その結果、就学時(6歳6ヵ月)には文章の解読が可能となった。また、書字能力は文の視写が可能なレベルとなった。
V.結果と考察
平成14年4月(6歳6ヵ月)に、T.M.は小学校に入学した。就学時の言語性知能と読書力(金子書房版にて評価:偏差値48、段階店3、評価「中」)は、ほぼ年齢相応の発達で、手の運動・移動・動作性知能では、やや遅れを認めた。就学時の段階では、明らかな学習障害(LD)は予防できたと考えられた。しかし、ウイリアムス症候群の特徴とされる、視空間認知の著しい障害や多幸的で多弁といった状態は残存し本児固有の手の異常のため、書く力も遅れていた。今後、年齢が上がるにつれて、どのような学習障害が生じるか経過を追いたい。
(2006年4月)
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