ウイリアムズ症候群表現型の認知障害の特徴
− 作業療法実施の2症例の報告と比較 −



本間 朋恵 1,4) 、仙石 泰仁 2)、中島 そのみ 3)、吉田 雅紀 4)、富田 英 5)、舘 延忠 1)
1)札幌医科大学 大学院 保健医療学研究科 発達障害分野
2) 札幌医科大学 大学院 保健医療学研究科 感覚統合障害分野
3)札幌医科大学 保健医療学部
4)北海道療育園
5) 札幌医科大学 医学部 小児学講座
北海道作業療法 20巻 特別 2003、59ページ

はじめに

ウイリアムズ症候群(以下、WS)は第7染色体上の遺伝子欠失による隣接遺伝子症候群である。主症状としては、心血管異常、特有の顔貌、平均IQ55の精神発達遅滞などであるが、特に注目されているのは言語機能(語彙数、統語課題)と視知覚機能(積み木課題、模写課題、線分の傾き認知課題)に解離があることである。言語機能は比較的保存されているのに対し、視知覚機能は著しく劣っているという特徴的な認知障害を持っている。国外での研究では、先天的な疾患でありながら、後天的な脳損傷でみられるような言語性、視覚性機能の解離があるとの指摘もある。国内における先行研究では、症例報告が極めて少なく、WSの認知特徴を大規模に調査したものはない。さらに、WSに対するリハビリテーションや教育的支援の方法に関する報告も少ない。そこで、WSに共通した認知特徴を把握し、適切な支援方法を確立していく必要があると考えた。

本報告では、筆者が作業療法を実施している2症例の評価結果を、これまでに国内で報告されている症例結果と比較した。この結果をもとに各症例間の認知機能の共通性と相違を分析し、WSに生じる認知障害の特異性について検討したので報告する。

(2005年5月)



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