摂食機能獲得期に拒食傾向を示す症例への多角的アプローチ
仁平暢子1)、加藤光剛2)、松浦芳子2)、佐藤俊紀2)、妻鹿純一1)、佐藤倫子3)
1):日本大学松戸歯学部障害者歯科学講座
2):静岡こども病院歯科
3):伊豆医療福祉センター
日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 10(3)(通号20)、378ページ、2006年12月
【はじめに】
当院では昭和62年より摂食外来を開設し、チームアプローチによる指導・訓練を行っている。摂食外来を受診する小児の中には摂食機能障害が生じるほどの機能的な問題がないにもかかわらず哺乳ビンでのミルクや経管からの栄養に依存し他の食物を拒否する、いわゆる依存・拒食ケースが見られる。当院ではこのようなケースに対し摂食機能訓練や指導だけでなく多角的視野からアプローチを行っている。今回平成16年からの2年間に受診した患者の中で依存・拒食を呈した3例について報告する。
【対象】
症例1:2歳3か月女児。ウィリアムズ症候群、先天的心疾患、腎不全。生後6か月時から離乳食を開始するも拒否が続き、哺乳ビン依存となる。2歳3か月時、入院をきっかけに哺乳ビンも拒否するようになり経管栄養依存となる。
症例2:1歳11か月女児。二分脊柱、水痘症。生後6か月時から離乳食を開始し、数さじ摂取するが、入院をきっかけに哺乳ビン依存の拒食となる。
症例3:2歳2か月男児。神経因性膀胱。生後6か月時から離乳食を開始するが、生後11か月時の発熱を境に哺乳ビン依存の拒食となる。
【結果及び考察】
以上の症例に対し、拒食行動を継続させないことを目的として一定期間食事練習を中止し、遊びの中で感覚運動経験を促す指導や母親へのカウンセリングなどを行うことにより拒食の改善傾向が認められた。こういった依存・拒食のケースでは、感覚運動経験の不足による過剰防衛や食事の強要等による母親の心理的影響などが複雑に絡んでいると考えられ多角的アプローチが重要であることが示唆された。
(2007年10月)
目次に戻る