初診時原因不明とされていた離乳移行困難症例への摂食指導
田村 文誉、高橋 賢晃、戸原 雄、町田 麗子、菊谷 武
日本歯科大学附属病院口腔介護・リハビリテーションセンター
日本歯科大学大学院生命歯学研究科臨床口腔機能学
日本口腔リハビリテーション学会雑誌 24巻1号 80ページ(2011年)
目的:
哺乳から離乳への移行が上手く進まない場合、対応には困難を極めることがある。演者らは、初診時に健常児と判断され通常の離乳移行を進められたものの栄養を十分摂取することができず、栄養不良を呈したウィリアムス症候群と自閉症疑いの2症例を経験したので報告する。
対象:
症例Aは在胎41週で出生した初診時0歳9か月の女児である。主訴は、離乳食移行困難である。出生時より哺乳力が弱く、拒食傾向であった。母親は、本児の療育を担当していた保育士より「お母さんの食べさせ方が悪い」と指摘され育児不安が強かった。初診時、吸啜反射や探索反射が出現し、ペースト食はほとんど摂取できなかった。症例Bは在胎41週で出生した初診時1歳4か月の男児である。主訴は離乳食の拒否である。そのため貧血となり、鉄財を服用していた。初診時の機能は、成人嚥下を獲得していたが味覚異常があり、顔面と口腔内には過敏が認められた。
経過:
症例Aは、ペースト食の摂取を中止、哺乳瓶からの哺乳のみとし、不足分を経鼻胃管から注入することとした。1か月後、ウィリアムス症候群と診断された。原始反射が消失し、半年後に咀嚼機能の獲得が認められた。経鼻胃管を抜管、完全経口摂取となった。症例Bは、脱感作の施行、拒食の誘因であると推測された鉄財の中止、母乳からの哺乳継続、小児用栄養補助食品の利用を進めた。その後自閉傾向を指摘された。2歳11か月時に完全経口摂取、咀嚼機能の獲得となった。
考察および結論:
一般に離乳食をすすめるにあたっては、月齢段階の指標にされることが多い。しかしながらこのような対応は、発達の遅れがある幼児において、むしろその遅れを助長することになりかねない。本症例の経験より、母親の育児不安を取り除き子供の成長発達を促すためには、関連職種との密接な連携を図り、栄養と機能を重視した摂食指導が必要であることが示された。
(2014年10月)
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