(1997.1.10 作成) (1997.2.24 修正) (1997.7.10 修正)

この小冊子は、ウイリアムス症候群の生徒を持つ教師の手助けになることを目的としていま す。もちろん、生徒に関する最も重要な情報源は、その子供自身とその家族です。両親・兄弟姉 妹や生活環境が、生徒達の成長や性格に大きな影響を与えます。遺伝的な影響もあります。ウイ リアムス症候群を持つ生徒にとって、この症候群は、その子の「人となり」をきめる、要因の一 つにすぎないのです。


ウイリアムス症候群を持つ子供達は、特徴的ないくつかの障害を持っていますが、その程度 は大きくばらつきます。中には、医学的にはほとんど問題のない子もいます。学習障害の程度や、 集中力の度合、じっとしていられるかどうかについても、千差万別です。この小冊子で述べる行 動や学習の例は、学習障害の可能性を述べているだけで、けして、ウイリアムス症候群の子供達 全てにあてはまる特徴ではありません。これからいろいろな特徴を挙げていきますが、あなたの クラスの生徒にはすべてにあてはまるかもしれませんし、ひょっとしたら、ひとつもあてはまら ないかもしれません。


共通的に持っている傾向や性格とその対応策を知っておくことは、たいへん役に立ちます。 特に、普通とは違った行動や学習傾向を持つ子供達を、理解し、指導する時には重要です。この 小冊子では、ウイリアムス症候群に関する医学的側面及び教育的な立場の情報を提供するととも に、ウイリアムス症候群が原因となる問題への対応策をお教えします。

ウイリアムス症候群は，特発的に発生する先天的［神経行動的］異常です。つまり、遺伝で おきるものではありません。原因は、薬でも環境でも精神的なものでもなく、「偶然」に起きる ものです。非常にまれな病気で、20､000回の出産に１回程度の割合で発生します。ウイリアム ス症候群は、認知・行動・運動機能などの分野で発達に影響を与えます。


ウイリアムス症候群の幼児の多くは、生まれてから数ヶ月の間は、重度の睡眠障害を伴う「か ん」の強い子供です。この症状は、そのうちに（通常は１才の誕生日までに、それも突然）おさ まり、よく眠るようになります。ウイリアムス症候群の子供達は、両親の睡眠を邪魔したことを わびるかのように、愛敬があるかわいい赤ちゃんになります。なぜこのような症状が起きるかは 良く解っていませんが、胃が痛むのではないかと考えられています。この時期は、家族にとって 非常に大変な時期です。


運動機能の発達面において、ウイリアムス症候群の子供達は、正常な子供達に比べて歩きは じめる時期が遅れる傾向があります。協調作用、平衡間隔と筋力のバランスの問題です。小さい ときから、微細運動が出来ないという傾向も見られますが、これも協調作用と筋力の障害が原因 です。


知能的にも、大きなばらつきがあります。学習障害を持ちながらも、平均あるいは平均以上 の知能を持っている子供もいます。しかし、正常との境界線上か、若干発達が遅れている（mildly retarded）と判断される子供が大多数で、なかには、中程度の(moderate）精神的発達遅延の領 域に入る子供もいます。これに関して重要なことは、子供一人一人の分野毎の能力レベルが、非 常にアンバランスであるということです。


ウイリアムス症候群の子供達は、通常は非常に社交的で、まだ言葉が出ない幼児のころから ボディランゲージを使います。顔の表情や目線を合わせる（アイコンタクト）方法を使いはじめ、 そのうちにジェスチャーで意志を伝えはじめます。喋り始める時期は、通常より遅れます。初期 の言語能力の発達には、ずいぶんと個人差がありますが、ウイリアムス症候群の子供達は１才半 までには単語をしゃべり始めます。このころまでに、文節になった言葉を（２語文？）を話す子 供もめずらしくはありません。歌をおぼえることが得意な子供もいます。この音楽的才能と同じ ように、耳から聞いた情報を覚える才能を発揮することもあります。ウイリアムス症候群の子供 達の多くは、３才頃には文章を話せるようになります。４〜５才までには、他の能力に比較して、 言語能力に優れてきます。

ウイリアムス症候群の子供達は概して健康ですが、幾つか定期的な観察が必要な部分があり ます。 心臓・腎臓・歯に共通的に問題があります。これらに対して、一般的には、症状が出て から治療が行われます。


ウイリアムス症候群の子供達は、他の子供達より頻尿の傾向があります。原因はよくわかっ ていません。非定期的にトイレに行くことを、黙って認めてあげなければいけません。 ウイリアムス症候群の子供達は、両親の身長から予想される身長より低いことが多いようで すが、一般的には、年齢別の身長分布の正常領域に入っています。


あなたのクラスにウイリアムス症候群の生徒がいたら、小児科医に見せるとともに心臓専門 医による定期的検診を受けさせることが重要です。また協調運動や平衡感覚、背骨や関節に問題 を持っている場合も多いので、理学療法士(Physical Therapist)に見てもらうことも必要になりま す。

ウイリアムス症候群の子供達は、上をむいた小さな鼻・巻き毛・厚い唇・膨らんだほっぺた・ 小さな歯・明るく魅力ある笑顔・きれいな目、などという特徴的な容貌をしています。ウイリア ムス症候群の子供達の外見は非常に似通っていますが、正常な子供達と同様、両親によく似てい ます。

ウイリアムス症候群には、特徴的な性格があります。外向的で社交性に富む、元気で熱狂的、 芝居がかった(dramatic）おおげさな態度、行き過ぎたなれなれしさ、散漫な注意力、音への過 敏性、これから起こることへの不安などです。


ウイリアムス症候群の子供達はしばしば独特の自己主張をします。症候群に起因する特徴の 多くは、この自己主張の効果を高めるように働きます（きれいな目、明るく魅力ある笑顔、熱狂 的な態度、社交性と会話、相手の感情にたいする鋭い感覚、かわいい上向きの鼻、めったに会わ ない人や長い間会わなかった人をよく覚えていること、自分の感情・特に幸せなことについて表 現力に富んでいること）。多くのウイリアムス症候群の子供達の持つ、この天性の表現力を伸ば し誉めてやることが大切で、単に”ウイリアムス症候群だから”といって無視しないでください。 いくつかのウイリアムス症候群に起因する問題行動は、クラスへの課題を提供することにも なります。できるだけ簡単な方法で、子供の手助けになる手法があります。これらから、その特 徴と手法を述べます。

集中力不足は、しばしば「指示に従わない」とか「席に座っていられない」という問題を引き 起こします。

一般的には、集中力に問題がある子供達に有効なアプローチがウイリアムス症候群の子供達に も効果的です。
• 時間がかかる課題に対しては、要求を柔軟に変えます
• 課題の途中で、しばしば「休憩」をいれる
• 難しい課題達成には、強い動機付けをもつカリキュラムを
• 注意力を散らせないように；目にみえることだけではなく音にも注意
• 集中できたときには誉める。また、課題を投げ出すうな行動にたいしては、再度指示を出すか、無視をします
• 行動に関しては、ある程度自由度を認めます
• 小さなグループで
• 「肯定的な行動管理手法」に精通している行動療法士に相談する
  

たとえば
• うれしいときに、興奮しすぎる
• たいして悲しくない時に、すぐに涙を流す
• あまり恐くない出来事を、おおげさに恐がる
  

• 何が問題行動かを特定します。例えば、手をあげなかったり、突然何かを始めたり、熱狂 的な興奮を見せる、などという特徴を取り上げれば、クラス全体にとっても意味があります。 また、よく涙を流したり、あまりに不安がることは、ウイリアムス症候群の子供にだけで はなく、他の生徒にとっても問題行動です。
• 過度の不安やフラストレーションを与えないような環境を作りながら、段階的に自分で感情 をコントロールできるように援助してあげましょう。 　例としては
• フラストレーションを感じ始める時期を予期してください。フラストレーションの原因とな る状況から自ら遠ざかるように、あるいは、フラストレーションが大きくなる前に、 別の活動を見つけられるように援助してあげてください。
• 前もって予想できない予定や計画の変更は、極力避けてください。
• 物語やロールプレイを使って、その子の感情を刺激するような状況をいろいろと体験させて 下さい。
  

この特徴は、不安に対する過剰反応とあいまって、避難訓練・電気掃除機・天井ファン・暖房 やスチームシステム・始業や終業のベル等の学校活動に関連する音によって、問題行動を起こ すことがあります。注意力が散漫になったり、興奮しすぎたり、恐怖心をいだいたりします。

• 避難訓練や時報など予測できる音に対しては、直前に注意をしてあげましょう。
• 気を散らせるような音の発生源を、見せてあげましょう。できるならば、音を出し始める操 作をさせてください。（ファンのスイッチを入れたり切ったりする。あるいは火災報知器が 鳴っているところを見せる等）
• 音をテープに録音して、その音を自分で聞いてみるようにうながして下さい。 　　（音量をあげたり、音質をソフトにしたり）
  

ウイリアムス症候群の子供達には、普通以上に固執する「お気に入り」の話題を持ってい る子供がいます。それは、消防自動車・電車・芝刈り機などのように、不安の対象であるこ ともあります。骨などの体に関する話題に、執着したり非常な興味を示す子供もいます。我々 にとっても、恐ろしいものに興味を持つことは普通のことです（ホラー映画やスリラーを見 たいというように）が、ウイリアムス症候群の子供達は特に顕著です。これらの話題は、ウ イリアムス症候群の子供達が自信をもって話しができる分野にすぎないことも有ります。そ の場合は、ウイリアムス症候群の子供達が、相手と対等に話すために選んだ話題なのです。

• IEP(注)の一環として、社会性を教えて下さい。ロールプレイや物語、話し合い、小集団活動 を通じて、その場にあった話題を選ぶことを教えて、その子供のレパートリーを広げてあげ て下さい。
• 同じ質問を繰り返す（例：いつ避難訓練があるの）ような時は、最初の質問があった時に、 子供が納得するように十分答えてあげてください（同じ質問をその子供に聞いてみることで、 理解したかどうか確認できます）。それ以後は、同じ質問は無視して、別の話題や活動を薦 めてあげてください。その話題を続けるかどうかを話しあうことも避けてください。そうで ないと、話題にこだわり続けることになるからです。
• 時々は、「お気に入り」の話題を持ち出してあげてください。
• 教材として、「お気に入り」の話題を取り上げてください。授業に身が入るための強力な動 機付けになります。
  　　（注）IEP：Individulized Education Plan（個人教育計画） 特別の教育が必要な子供達の、指導方法と技能や能力の到達目標を記入した計画書。最低 一年に一度見直されるが、両親からの変更要求により、逐次変更することも可能。

5a．予定や日常的作業が突然変更されることに対する不安

5b．手法

• 一日の流れに沿って、予定や作業の移り変わりを予告するような特定のサイン（掃除時間の 前に特定の音楽を流すなど）を出してあげてください。
• 急な予定変更は避けてください。
• 就学前の年齢の子供に：一日の予定を絵で表示したり、カレンダーに絵で予定を書き込んで、 壁に張っておいてあげてください。
• 就学年齢以降の子供に：デジタル腕時計とスケジュール帳を持たせて下さい。
• 子供達がパニックになったり、不安を感じるような「変更」がどのようなものか良く観察し て把握してください。
• 予定された計画に対して、あまり過度の期待を抱かないように指導することに力を注いでく ださい。
  

これらの行動は、ひどいものではなく、問題になることは少ないでしょう。これらの行動は、 単に、子供にとってどうにもならない部分であることを認識することが重要です。ですから、 くどくどと注意したり、そのような行動をしないように意識させすぎないようにしなければ いけません。

ストレスを与えないように気を付けながら、できるだけその行動を無視することは、大変効 果的です。子供自身や回りの子供達に悪影響を与える時には、時々その行動を意識させるよ うな方法（例：爪かみを我慢できたら、１時間に一枚シールをあげる）が役立ちます。

非常に社交性がある反面、ウイリアムス症候群の子供達は、友達関係を作ることがにがて であることが多い。これは、発達や学習能力が遅れていることに加えて、注意力を持続でき ないことや、衝動的な性格が原因だと考えられます。しかし、多くの子供達は、友達を作る ことに成功しており、これを、学校における成長の目標のひとつとするべきです。

• 社会性の到達目標の一つとして、子供のIEPに入れてください。
• 両親と協力して、友達になってくれそうな子供とうまくやっていけるように、援助してあげてください。
• 学校生活の一環として、交流の機会を作ってあげてください。（例：友達になってくれそう な子供を、グループ活動や本読みなどのときにペアにする）
• 年上や年下、特別の関係の有無などを考慮し、いろいろな子供と交流できるよう、考慮して あげてください。
  

多くのウイリアムス症候群の子供達は、学習障害をもっています。しかし、この障害の程度 には、非常に幅があります。能力のなかには、平均かそれ以上のもの、障害と普通の境界線上の もの、軽度の精神的障害の部類に入るものなどがあります。軽度の精神障害であり、幾つかの能 力は重度の障害と分類される子供もいます。ウイリアムス症候群の子供達は、普通の子供達に比 べて、各分野の能力間に実質的な大きなばらつきがあります。例外はありますが、長所・短所は、 比較的似かよった傾向があります。例えば、ウイリアムス症候群の子供は、６才で同年令の子供 と同じくらいの語彙と知識の貯えがありますが、字を読んだり計算したりという能力は３才児程 度しかないということがめずらしくありません。このために、ＩＱレベルを測定したり、最適の 学級を決めることは非常に難しくなります。

ウイリアムス症候群の子供の能力の長所・短所を調べるために、普通の知能テストは役にた ちます。しかし、出てきた結果をうまく解釈することが非常に重要です。いろいろな分野の能力 におおきなばらつきがある子供の場合、それらの能力の個々の数値を平均することにはまったく 意味がありません。例えば、「語彙は８才児のレベルで、絵を書く能力は３才児のレベルだから、 平均すると、この子は５才児の能力になり、少し発達が遅れている」と結論付けるのは無意味で す。それよりも、個々の分野の能力をよく検討して、それぞれの分野に適した教育計画を作成す ることが重要です。例として、「３年生の理科をやりながら、１年生の算数を勉強する必要があ る」というように。

検査を行う場合は、単語を見つけることが困難であることに注意をしなければいけません。 そうしないと、単語で答えるタイプのテストの結果が、実際の能力より低めに出てしまいます。 「限界を調べる」タイプの方法（例えば、言葉やジェスチャーでヒントを出す等）も効果的です。 その場合は、ヒントを与えた場合と、与えなかった場合のテスト結果を記録します。視覚と運動 の調和機能や、空間認識の機能が必要なテスト項目（例：暗号化(Coding)、ブロック(Block design)、 迷路、視覚と運動の調和(VMI?)）に関しては、非常に悪い結果が出ることが多いようです。この 結果は大切な情報ですが、「知能」とはきちんと区別して考えることが大切です。４〜１２才の 子供向きのカウフマン知能テスト（Kaufuman Assesment Battery)等には、空間的認識を必要と しない絵を認識するような分野の能力を調べるものがあります。集中力不足に対応するために、 テストを何回かに分けて行うことも必要になります。

以下のリストは、同年齢の子供達と比べるのではなく、その子供の持つ能力のうちで相対的 に優れている部分です。

• 言語表現能力
  ウイリアムス症候群の子供達のもつ豊富な語彙は、だれでもすぐに気が付く特徴です。精神 年齢という見地で、最も高くなる能力です。ウイリアムス症候群の子供達は、少しおかしな 単語や言い回しをすることがよくあります。これは、耳から聞いた音を覚えておく能力が非 常に高いことと、言語処理能力が若干問題がある結果として、言葉が混ぜ合わされてしまう ためと思われます。子供の能力のすべてが、語彙と同じレベルにあるというように誤解しな いことが大切です。
  

• 長期記憶
  ウイリアムス症候群の子供達は、一度覚えたことを比較的長く記憶しています。名前や出来 事に対してだけでなく、学習面にも応用できます。新しい教材を教えることは難しいことが 多いのですが、一度覚えるとなかなか忘れないのでぜひ教えこむように努力して下さい。た だし、文字や右左の区別、方向感覚のように、空間的な認識が必要な分野に関しては、なか なか覚えられないことが多いようです。
  

• 聴覚過敏症・音に対しての過敏性
  ウイリアムス症候群の子供達によく見られる音に敏感な特徴は、読書能力を獲得する時 に利用することができます。声（特に単語の最初の音や最後の音）に対するひどい過敏性が なければ、読み聞かせることによって、読書能力を付けたり、ものの名前を覚えたりするこ とができます。
  

• 写真やイラスト、あるいはビデオ等から情報を探し出す能力
  言葉の教育に用いる補助教材として、これらのメディアが利用できます。ウイリアムス症候 群の子供達は、しばしば絵を使った教材がたいへん気に入ります。読む力を付けるための包 括的言語アプローチは、伝統的な音素的アプローチに加えてよく使われるます。
  

• 体験(hands-on)から学び取る能力
  実際にいろいろなことを経験させるために、実際に体験させてみることで、ウイリアムス症 候群の子供達の注意力を保ち続けることができます。
  

• 音楽的能力
  ウイリアムス症候群の子供達は、他の子供達に比較して、特別の音楽的才能を持っているこ とが多いようです。ある意味で音楽が好きなこともしばしば見られます。社会性を身につけ たり、気晴らしをするために、歌や楽器は理想的な手段になります。さらに、算数や国語教 育の手段としても有効です。
  

• 耳から聞いた音にたいする、短期的・長期的記憶
  読み方を教える時に大変役立つ分野です。例えば、小学校入学前の子供達でも文字を読める ようになるずっと前に、歌や物語を記憶し、絵本の文章を追っていけるようになります。
  

• 相手の感情に対する、興味と敏感さ
  ウイリアムス症候群の子供達は、しばしば相手の感情に非常に敏感です。例えば大人達の雰 囲気の突然の変化に気が付いたり、他の子供が怒られていることに共感して涙を流したりし ます。
  

• 人付き合いや会話を開始する能力
  人付き合いを非常に好む性格は、教育に利用することができます。例えば、何かをする時に 他人とペアで行ったり、同年代の子供を御手本にする等。
  

• ウイリアムス症候群の子供達に共通する短所は何ですか。
  ウイリアムス症候群の子供達には、不得意な分野や勉強方法もあります。これから掲げるリ ストは、共通的に見られる短所と、それに対する対処方法です。
  

  1a．短所
  
  • 微細運動や、視覚と運動を協調させることが必要な活動
  • 文字を書いたり、絵を描いたりという、紙と鉛筆を使った活動
  • 靴のひもを結ぶ
  • １ページ内に描かれている物の数を数えること
    

  1b．対応方法
  
  • パソコンの利用 IEPにパソコンを使うことを取り入れてください。そして、読み方や算数の勉強の教材とし てだけでなく、パソコンそのものの使い方も教えてください。パソコンは、いずれ紙と鉛筆 に取って代わるものになります。パソコンは、単に何かに対するご褒美として使わせずに、 あくまでも道具として使うことが大切です。
  • 紙と鉛筆は最小限にする。
  • なぞることも最小限に
  • 名前を書くことが難しければ、名前のスタンプや頭文字だけでも認めて上げてく ださい。
  • 算数を教える時は、紙に書いてある絵ではなく、実物を使って数えさせるようにしてください。
  • 着替えも一人でできるように両親に協力してもらってください。たとえば
    • ひも靴ではなく、マジックテープの靴にする
    • 必要ならば、ズボンのボタンもマジックテープに変える
      

  2a．短所
  • 次のような空間的認識が必要な活動
    • 文字、なかでも左右逆になったような文字（ｂとｄ）の区別
    • 右と左
    • アナログ時計で時間を知ること
    • 教科書などで、今習っているページを見つけること
      

  2b．対応方法
  
  • ドリル等の１ページに載せる問題の量を減らしましょう。（１ページにひとつかふたつ）。 普通のドリルのページをコピーするか、別の紙で覆う等すると簡単にできます。
  • 読み方を教える時には、耳から聞いた音をよく記憶できる能力や、絵から情報を見出せる能 力を利用しましょう。
  • 単語を覚えるきっかけとして、かるた(lotto)のように、絵と一文字を書いたカードを利用して下さい。
  • すべての文字を覚える前には、その子供が気にいっている単語を覚えさせて下さい。
  • 総合的言語アプローチは効果的です。ただし、図形認識が非常に困難な子供には、物語を読 ませるのではなく、聞きとらせるというような柔軟性も必要です。
    

  3a．短所
  
  　　単語を見つける
  子供達の中には、たった一つしか正しい答えがないような質問をされた時に非常に「ストレ ス」を感じる子供がいます。一方で、多くの子供達は、自発的なスピーチをストレスと感じ るようです。子供達の多くは、回りくどい表現や、そのものずばりの話しではなく、関係し そうなことを話し続けるという方法を使うようになります。この方法は、集中力が無いこと とあいまって、時々話しが意味不明になることがあります。最初に、ある事を話し始めます が、ある単語を思い出せなくて、関係しそうな文節にたどり着き、結局は最初の話題ではな く、関連する話題に移行してしまうことになります。
  

  3b．対応方法
  
  • 言語療法士と頻繁に連絡をとりながら、指導方法等に関する援助を受けて下さい。
  • 音による手掛かり（単語の最初の文字を話して、手掛かりとする）を与える。この結果とし て、残りの単語全部を聞きだそうとして、あなたをじっと見て待っているいるという態度を とるような子供が出てくることもあります。
  • 自分自身でジェスチャーの手掛かりを見つけられるようにはげまして上げてください。 （例：それを使って何をしたの？　どうやって使うの？）
  • 自分自身が視覚的手掛かりを見つけられるようにはげまして上げてください。 　　（例：何に似ているの？）
    

  4a．短所
  
  　貨幣・お金・時間・繰りあがり繰り下がり等の桁の概念等を含む算数
  

  4b．対応方法
  
  • 教材を使う
    • デジタルの時計や腕時計
    • 電卓の利用
  • 個人の予定を使って日付を教える
    • 絵や文字で予定を書き込んだ、１日・１週間・１ヶ月の壁掛けカレンダーを使う。
    • 学齢期以降の児童には、手帳を使うように薦める。
  • 「決めた予定に固執する」ようなカリキュラムは避けて、柔軟性を。
    • 貨幣についてまったく理解できない子供もいますが、次のカリキュラムに進めば理解 しやすくなるかもしれません。
      

　　ウイリアムス症候群の子供達が加わるべきクラスについては、いろいろなバリエーションが あります。個々の子供に最適な環境というのは、その子がどのような援助を必要としているか、 学校が普通学級や特殊学級を通じて何を提供できるかによって変わります。課外に特別な療法を 受けながら、普通学級で十分うまくやっていける子供もいます。カリキュラムを子供に合わせて 変更したり、援助を与えたりすることが必要です。（例：行動療法士（behaviorist）による集中 力に関するコンサルテーションや、心理学者による友達関係改善に関するコンサルテーション； 「書き方」に関しては出来るだけパソコンを利用する；活動期間の間に何度か休憩を入れる。）
介護をつければ、普通学級にいける子供もいます。この場合、介護者は、ウイリアムス症候 群の子供だけではなく、それ以外の子供の補助も行うようにすると効果的です。
学習障害や行動問題が重い子供や、人数の多いクラスにいるにもかかわらず補助を受けられ ない子供達は、特別クラスに在籍することで恩恵があります。このクラスはその子供の教育的に 必要な処置内容によって、学習障害児や発達遅滞児のクラスでもよいと考えられます。我々は、 ウイリアムス症候群の子供達は、決して、問題行動を起こす子供達のクラスに入れないことを薦 めます。ウイリアムス症候群の子供達の行動に関する問題と援助内容は、このようなクラスの典 型的な子供達に対するものとは大きく違っているからです。
すべての子供達にとって、総合的な体験は、社会性や情緒を育てるために大変役にたちます。 普通学級の子供達との交流は、音楽・理科の実験・物語を聞く等というような構造的な活動の時 にうまく行くようです。この交流は、教師によって指導されて、普通学級の子供達が何回か、ウ イリアムス症候群の子供達のいる特殊学級を訪問するという逆交流から始めるとうまくいきま す。生徒達はいっしょにいることになれてくると、普通学級の友達に加わるという形で、普通学 級の「仲間」がウイリアムス症候群の子供達の面倒をみることができるようになります。

その子に必要なものを決めるための総合的な個人評価を受けると同時に、ウイリアムス症候 群の子供達は、個人的な言語指導・作業療法・理学療法等を受けることが非常に有益です。

この問題は、その子供、家族の考え方、他の子供達によって変わります。その子がウイリア ムス症候群のどのような側面に気が付いているのか、あるいは家族の中でどのようなことについ て話し合われているのかを、家族の人に聞いてみるように提案します。教師は、その子が今後も 同じ用語を使えるように、どのような言葉が使われているか聞くべきです。家族の人達は、ウイ リアムス症候群についてオープンに話し合い、ウイリアムス症候群がいろいろな障害の原因にな っていることを、その子供本人や他の子供達に、説明できるようにしてあげるべきです。しかし、 ウイリアムス症候群という言葉を使わないほうがいいと感じる家庭もあります。ウイリアムス症 候群についてその子本人と話し合うかどうか、そしてどのように話し合うかは、非常に個人的・ 個別的な問題です。すべての家庭にあてはまるような「正しい」方法はありません。
他の子供達が、どのような違いに気が付いているかをよく観察して下さい。特定の問題への 対応策としては、簡潔に真実を説明することが、小さな子供たちに対してもっとも効果がありま す。
幼稚園児や学童のウイリアムス症候群の子供にとっては、自分自身の体験が、役に立ち自信 にもなります。話しをすることが上手なある小学生の子供は、自分の「症候群」について毎年ク ラスのみんなにプレゼンテーションをすることに、プライドを持っています。

ウイリアムス症候群協会（Williams Syndrome Association）は、会報（全国版・地方版） を発行し、ウイリアムス症候群に関する図書館を持っています。ミシガンにある、本部に連絡を してください。