ウィリアムズ症候群の子どもの数を数える能力
Counting abilities of children with Williams Syndrome
Daniel Ansari supervised by Prof. Annette Karmiloff-Smith
"Heart to Heart" Volume 18 Number 1, March 2001, Page 3-4
これまでに17人のウィリアムズ症候群の子どもに面会し、彼らの数を数える能力に関
して調査した予備的研究結果を報告する。ウィリアムズ症候群の子どもの数える能力を検
査し、その原理を理解するために、「人形課題(puppet task)」と呼ばれる手法を用いた。
この課題において、子どもは無知な人形に数の数え方を教えるように求められる。人形の
ために物の数を数え人形に正しい物の数を教えること、人形の数え間違いを監視すること
が求められます。この実験を通して、ウィリアムズ症候群の子どもの数える能力がどの程
度発達しているか、数を数えることの概念、すなわち数えることが個数を決定することを
どの程度理解しているかを測定できる。我々は数を数える能力と数える原理を区別した。
「数を数える能力」という場合は、順番に数詞を列挙できる能力のことを示しています。
しかし、「数える原理」は、数えることが一組の要素が何個あるかを調べるためであること
や、各物体を重複しないように1回ずつ数えることを理解していることを示しています。
調査の結果、ウィリアムズ症候群の子どもは総体として数える能力に問題はない。しかし、
彼らの数える原理に関して言えば、言語能力が十分発達している子どもたちは、そうでな
い子どもたちや発達が遅れている子どもたちに比べて優れていることが判明した。この知
見は、ウィリアムズ症候群の子どもは数の概念を獲得するために比較的優れている言語能
力に依存していることを示唆している。今後、言語能力が同程度正常な発達をしている子
どもたちと比較することによって、ウィリアムズ症候群の子どもたちが正常な発達をした
子どもに比べて言語へに依存度がほんとうに大きいかどうかを確認する予定である。
今実施している研究に加えて、他にもたくさんのプロジェクトを計画している。特に、
ウィリアムズ症候群の子どもたちは「お金」に関して問題があるという逸話的な報告に注
目している。この問題が何に起因しているか、そしてどの程度建設的にこの問題を扱える
かを調査したい。幼児の数能力を調査することで数概念の基礎を調査することも予定して
いる。
フレッド・トーマス(Fred Thomas)は、ウィリアムズ症候群の子どもたちがどのよう
な非文字(non-literal)的言語発達をしているかを探索するプロジェクトに参加してきた。
このプロジェクトは、異なる概念間の相似点を見つけることを参加者に要求する課題を使
用している。ある課題は、ウィリアムズ症候群の子どもたちに対していろいろな概念をど
のカテゴリーに分類するか(太陽・月のような対象は同じカテゴリーだがイスは異なる)
を調査する。次の課題では、同じ分類カテゴリーに入らない要素間の類似点を探すように
求められる。探し出される類似点の種類は彼らの発達レベルに依存している。このプロジ
ェクトにおいて、被験者が持っている世界に対する概念的理解がどの程度成熟しているか
を計測する為にメタファー(metaphor:隠喩)を利用する。最初はカテゴリー間の知覚的
類似性(太陽はオレンジに似ている)で分別を行う。成長すると、カテゴリー間の機能的
類似性(太陽はオーブンに似ている)で分別を行う。これまでに100人の正常な発達をし
た子どもたちのデータを集め終わった。このデータをウィリアムズ症候群の子どもたちの
反応と比較し、近いうちに結果を論文にまとめる予定である。
(2001年6月)
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