養護学校におけるウィリアムズ症候群児の指導事例



下記発表の対象者は、小学校3年生のウィリアムズ症候群の女の子です。

(2003年10月)

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樋口 陽子
福岡教育大学
総合リハビリテーション Vol.31 No.9 875-879(2003年09月発行)

ウィリアムズ症候群は、1961年にWilliamsらによって初めて報告された遺伝子病である。約20,000人に1人の出生率だと推定されている。原因は、1993年に7番染色体長腕に位置するエラスチン遺伝子の欠失を含む隣接遺伝子症候群であることが判明しており、確定診断が可能である。この症候群は、大動脈弁上狭窄症、精神身体発達遅滞、小妖精顔貌を3大症状とする。平均IQは30〜70で、言語発達は知的発達に比して良く、話し好きでひとなつこいが、視覚認知、空間認識、数や時計の概念に軽度から重度の障害が見られると言われている。また、衝動性や集中力不足による多動が現れる場合もある。近年、本症候群に関する新たな知見が得られ、障害の特徴や予後について、医療分野での事例報告がなされている。

一方、教育分野でのウィリアムズ症候群に関する情報や指導事例の報告は少ない。平成12年度の全国の小学校学齢児童数は7,394,582人で、これをウィリアムズ症候群の出生率に照らし合わせて考えると、推定370人程度である。平成12年度の小学校数24,106校、養護学校814校に比すと67校に1人いる程度で、事例数が少ないことが事例報告を困難にしている一つの原因ではないかと思われる。

筆者は平成12年度、養護学校で自立活動担当として、ウィリアムズ症候群の女児に週3回各40分の指導を行った。自立活動とは、養護学校に在籍する全ての児童生徒に対して行われ、「個々の児童または生徒が自立を目指し、障害に基く種々の困難を主体的に改善・克服するために必要な知識、技能、態度および習慣を養い、もって身心の調和的発達の基盤を培う。」ものである。指導形態は、時間を特設して行う「自立活動の時間の指導」と教育活動全体を通して行う「自立活動の指導」とがあり、指導内容は「健康の保持」「心理的な安定」、「環境の把握」、「身体の動き」、「コミュニケーション」の5つの柱から成る。

好きなことを活用し、達成感をもたせながら指導を行った結果、日常生活動作や文字の理解の向上が見られたので、指導経過に考察を加えて報告する。



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