ダウン症候群とウィリアムズ症候群の小学生の家庭学習環境
The Home Learning Environment of Primary School Children with Down Syndrome and those with Williams Syndrome.
Ranzato E(1), Tolmie A(1), Van Herwegen J(1).
Author information:
(1)Department of Psychology and Human Development, UCL Institute of Education, 20 Bedford Way, Bloomsbury, London WC1H 0AL, UK.
Brain Sci. 2021 May 31;11(6):733. doi: 10.3390/brainsci11060733.
背景:定型発達集団を対象にした研究によれば家庭学習環境が認知機能の発達や学習に関して重要な役割を果たしていることが知られている一方で、ダウン症候群やウィリアムズ症候群と診断された子供の家庭学習環境はほとんど知られていない。本研究はダウン症候群やウィリアムズ症候群の子供の家庭学習環境を初めて調査し、認知機能プロファイルの差が家庭の読み書き能力や数値経験を反映しているかどうかを明らかにした。
手法と手順:主に英国に基点をおくダウン症候群(n = 35)とウィリアムズ症候群(n = 24)の小学生の親58人と里親1人からウェブページを利用した調査を行い、定量的かつ定性的データを収集した。調査は子供たちの全般的機能レベルと学業能力レベルを対象とし、家庭学習の種類や形式や頻度、子供の学業成績に対する両親の期待、読み書き能力や算数能力に対する両親の態度、算数に対する子どもの興味、家庭学習活動を支援するテクノロジーの利用などを調べた。
成果と結果:我々が得た結果によれば、ダウン症候群やウィリアムズ症候群の子供の家庭学習環境は全体的に似通っているが、子どもの認知機能プロファイルに基づいた違いがあった。比較分析の結果、数え上げの活動に対する支援では、両グループともにこの技能に関しては困難があることを報告しているにもかかわらず、ウィリアムズ症候群の子どもの親より、ダウン症候群の子どもの親のほうが関わる頻度が多い。さらに、読み書き能力に基づく活動は数学能力に基づく活動より頻繁に発生する、また家庭の算数基礎学力に関する環境は、数え上げ、算術、計算能力などの数学技能の異なる側面を支援する活動によって特徴づけられている。両グループの両親ともに、公式・非公式両方の読み書き能力や数学能力に基づく活動において子どもにかかわっているが、非公式な活動は数え上げや数認識技能を支援する場合により多くの活動が行われる。
結論と考察:本研究は、ダウン症候群やウィリアムズ症候群の子どもの家庭学習環境が異なる読み書き能力や数学能力に基づく活動によって違いがあること、そして家庭学習環境は子どもの長所短所によっても異なっていることを示している。得られた知見は先行研究や両親による介入の影響という観点から考察を行う。
(2021年6月)
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