Williams症候群における漢字の読み書き訓練法について



中村 雅子1,2)、稲垣 真澄1)、加我 牧子1)、加我 君孝2)
1)国立精神・神経センター精神保健研究所知的障害部、2)東京大学医学部耳鼻咽喉科
認知神経科学 第8巻 第2号 140ページ (2006年)

Williams症候群(WS)は知的発達レベルと比べて流暢な発話、良好な語彙と言語表現能力を示す一方、著明な視覚認知障害が指摘されている。年長例では、漢字など複雑な形態の文字習得における困難のため、読み書き障害を来たすと思われる。今回われわれは、14歳WS女児における漢字読み書き状況を評価し、訓練法を開発したので報告する。本児は軽度知的障害(WISC-IIIのFIQ=64、VIQ=81、PIQ=53)を示し、RCPMでも同様の結果(16/36)であった。また、聴覚的認知機能が比較的良好であったが、視空間認知機能の著しい障害が見られた。中学3年現在、漢字の音読は小学4年、書取りは小学2年レベルであった。誤りパターンは主に形態的なもので、語性錯語に類似した誤りも認められた。

本児は、文字や言葉を1)意味カテゴリーと関連付けること、2)熟語や文言といった語句として音韻的に記憶することが観察された。そこで、1)漢字の成り立ちを文章として覚えること、2)部首などの漢字の構成要素を色分けして提示すること、すなわち比較的良好である聴覚記憶と色情報処理機能を併用した読み書き訓練法を適用した。

(2006年11月)



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