ウイリアムス症候群の人達の音楽的才能



Musical Abilities in Individuals with Williams Syndrome

Daniel J. Levitin:Interval Research Corporation, Palo Alto, CA USA
Ursula Bellugi:The Salk Institute for Biological Sciences, La Jolla, CA USA

ウイリアムス症候群の人達の音楽的才能に関して現在研究中であるが、音楽的な理解と認 知のモジュール性に関して新しく得られた知見を報告する。ウイリアムス症候群は20,000 回の出産に1回の割合で発生し、特定の心臓疾患・小妖精のような(pixie-like)特徴的 な容貌(1963年の Black と Bonham-Carter の論文によれば、突発性高カルシウム血症に 関連する)・聴覚過敏症・7番染色体でエラスチン遺伝子を含む微少部分のコピーの片方の 欠失などを伴う。これまでの研究の結果、ウイリアムス症候群には、認知機能の障害(平 均IQ = 58)、空間認識、量の判断、推論等の能力に劣る一方で、人の顔を覚える能力に優 れ、ある程度の年齢になれば比較的よく保存された言語能力を持っているという特徴があ る。(Bellugi, Klima & Wang, 1996; Bihrle, Bellugi, Delis & Marks, 1989; Reilly, Klima & Bellugi, 1990) 。 言語能力とその他の認知能力レベルが食い違っていることから、ウ イリアムス症候群は言語のモジュール性を示す強力な論証になっている。

数々の逸話から、ウイリアムス症候群の人達は音楽的能力も持っていることが指摘 されている。しかし、これまではウイリアムス症候群の人達の音楽的能力に関する科学的 な調査研究はほとんど行われていない。

歴史的背景から、実験心理学では、知性はどちらかというと画一的なもの、精神発 達遅滞は程度の差はあるが複数の認知機能ドメインに同じ様な障害があるもの、というよ うにとらえていた。個別に上手に抽出された典型的な人達の集団に対する研究によって、 特定の認知機能の側面に対する研究が可能になった。これらの人達に対する研究から、特 定の精神機能のモジュール性に関する議論に終止符を打つ証拠が見つけられたり、認知機 能を支えている神経構造を理解するための手掛かりが得られる。Bellugi はウイリアムス 症候群に関して、一貫した系統的な研究を続けることで、前述の課題に対する我々の理解 を深めるよう努力している(e.g., Bellugi et al., 1996; Karmiloff-Smith, Klima, Bellugi, Grant & Baron-Cohen, 1995)。

この事前報告書では、1996年にMassachusetts 州 Tanglewood に近い Lenox の Belvoir Terrace で開催された、ウイリアムス症候群音楽芸術キャンプに参加したウイリ アムス症候群の人達について、質的(n=40) な面と量的な面の (n=10) 両面から研究を行お うとしている。

質的な観察

量的な観察 結論 参考文献 (1997年11月)

目次に戻る