ウィリアムズ症候群の人は絶対音感を持つ割合が高い



米国のウィリアムズ症候群協会(WSA)の会報に掲載されていた記事です。

(2001年11月修正)(2002年3月修正)

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People with Williams Syndrome more likely to have perfect pitch

UC Irvine Study Reveals New Characteristics for Music and Language Acquisition
"Heart to Heart", Volume 18 Number 3, September 2001, Page 7

2001年7月19日、カリフォルニア州アーバイン市:知能指数が低く身体障害を特徴と する稀少神経発達障害病であるウィリアムズ症候群を持つ人は平均集団に比べて絶対音感 を持つ割合が高いことが、カリフォルニア大学アーバイン校(UCI)の研究で明らかになった。

さらに、普通の人が絶対音感を獲得するための音楽トレーニングは幼い時期に受けな ければいけないことに比べて、この病気の人はこの音楽能力を獲得できる期間が長いこと が大きく異なっていることが判明した。

UCIの生物学名誉教授であるハワード・レンホフ(Howard M. Lenhoff)と彼の同僚によ って実施された5人のウィリアムズ症候群の人に対する予備研究によれば、彼らは認知レ ベルが低いにも関わらず絶対音感は最高レベルにあることがわかった。さらにこの研究に よって音楽や言語獲得に関する神経メカニズムの詳細が明らかになった。この発見は雑誌 「Music Perception」の夏号に掲載された。

アメリカとカナダにはおよそ4500人のウィリアムズ症候群患者がいる。この人達は生 まれながら7番染色体から20個程度の遺伝子が欠失している。認知障害や身体障害がある にもかかわらず、ウィリアムズ症候群の人は言語使用や高度な音楽的才能の獲得に強さを 発揮する。音の高さや名前を認識し、その音を出せるという絶対音感はこの音楽的才能の 一種である。

「我々の発見によって、この病気の原因となっているわずかな数の遺伝子が数多くの 性格や特徴に影響を与えているということがわかりました」、とレンホフは言う。

西洋人はおおよそ一万人に一人の割合で全体音感を身に付けられる。このすばらしい 才能は3才から6才の子どもの間に音楽トレーニングを受けないと獲得できないことも明 らかになった。

この研究で、レンホフはウィリアムズ症候群の人向けの音楽キャンプに参加した5人 にテストを行った。5人の音楽的能力は様々であり、年齢は13才から43才で知能指数の平 均は58であった。1人だけが3才から6才の間に音楽トレーニングを受け、全員楽譜は読 めない。単音あるいは和音を構成する2音・3音を認識させる1000回以上のテストを実施 した結果、絶対音感に関してほぼ満点(97.5%)の成績であった。

どの被験者も絶対音感を持っていることは事前にわかていなかった。5人全員が絶対音 感を持っていたという事実は、ウィリアムズ症候群の人で絶対音感を持つ割合は一般人に 比べて少なくとも10倍以上であることを示唆している。ウィリアムズ症候群の人の30%く らいは絶対音感を身に付ける能力があると、レンホフは推測している。

「さらに、5人の被験者のうち4人が6才を過ぎてから音楽トレーニングを受けている ことから、ウィリアムズ症候群の人が絶対音感を獲得できる期間は成人期まで広がってお り、期間に終りがない可能性さえあります。このため、ウィリアムズ症候群の人を対象と した研究は、人の脳内で音楽や言語能力を育成する神経メカニズムを探索する新しい手法 を見つけることを可能にします」、とレンホフは言う。

今多くの認知科学者の見方では、絶対音感という能力は小さな子ども達が言語、特に ベトナム語や北京語などの多音調(Multi-tonal)を獲得する際に役に立っている。

この研究におけるレンホフの同僚は、CUIの認知科学研究室の助教授ジョージ・ヒコッ ク(George Hickok)と同じくUCIのオレガリオ・ペラルズ(Olegario Perales)である。全米 科学財団(the National Science Fundation)とバーノン家基金(Bernon Family Fund)が資 金援助を行っている。



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