グロリアの満ち足りた一年間



米国のウィリアムズ症候群協会のニュースレターに掲載されていました。

(2004年4月)

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Gloria's Bang-up Year

By Howard Lenhoff
"Heart to Heart" Volume 21 Number 1, March 2004, Pgae22-23

元大学教授としての癖から、私は新たな一年間を秋から考えます。2002年の秋から2003年の夏にかけては、娘のグロリアにとってすばらしい1年間でした。この調子は衰える気配がありません。

振り返ってみましょう。4大テレビ局への出演、2つの大学での演奏会、2枚のCD(ひとつは世界的レーベルを通して)、フルコーラスとオーケストラをバックにした大きなコンサート会場の主演歌手、二つの会議におけるキーノート歌手、表彰、さらにはミシシッピー州セナトビア(Senatobia, MS)にある「奇跡の聖歌隊」(Miracles Choir)の一員として行った何十回もの演奏旅行などです。

2002年から2003年にかけての一年は、2002年7月にロングビーチ(Long Beach)で開催されたWSAの全国大会での演奏から始まりました。8月にはミシシッピの自宅にもどり、9月にテネシー州メンフィス(Memphis, TN)で行われるチャリティコンサートの準備を始めました。この月の終りには、あのエルビス・プレスリーの生誕地であるミシシッピ州ツペロ(Tupelo, MS)のユダヤ教会で開催されたユダヤ教の祝日(Jewish high holy days)を祝う集まりにおいて聖歌隊の副指揮者(assistant cantor)になりました。1週間後には、父親といっしょに南カリフォルニアに戻って、UCLA精神遅滞協会(Mental Retardation Institute of UCLA)の研究者の修養会(retreat)で発表を行いました。

ミシシッピに戻ると「奇跡の聖歌隊」と行動をともにしました。その中には、ミシシッピ州オックスフォードにあるセント・アンドリュース教会(St. Andrews Church in Oxford, MS)の演奏会も含まれています。そこで初めて彼女は聴衆の前でアコーディオンを演奏しました。演奏したのは美しくかつ難しいバッハの「「主よ、人の望みの喜びよ(Jesu of Joy)」です。

続いてミシシッピ大学(University of Mississippi)で行われる独唱会の準備を始めました。大学の学生以外としては始めてのことです。地方芸術新聞が一面の写真付きで3ページを割いて紹介するなど、独唱会は注目を集めました。グロリアは一夜にしてオックスフォードの有名人になりました。その夜の演奏は日本のフジテレビが取材しました。フジテレビはグロリアの特集番組を作成し2003年5月17日に放送しました。

2月になってもグロリアはペースダウンしません。オクラホマ州シャウニ−(Shawnee, Oklahoma)にあるオクラホマ・バプティスト大学(Oklahoma Baptist University)に行き、そこでも独唱会を行ない、その様子は数誌の有名な新聞社やオクラホマシティテレビ(Oklahoma City TV)に取り上げられました。大学職員であるサンドラ・メイヤー教授(Professor Sandra Meyer)が伴奏をしてくれました。サンドラはWSAがマサチューセッツで開催する音楽キャンプや、アイルランドのキャンプでピアノを教えています。

これらの演奏活動は二枚のCD製作につながりました。一枚は「Gloria Lenhoff Live」で、2つの大学で行なった独唱会から19曲が収められています。2枚目の「Religious Music」は2003年の夏に出たばかりです。ニューヨークにあり、創業54年のカラオケ製作会社の老舗であるMusic Minus One Group, Incがプロデュースしました。このCDではグロリアは9曲の宗教的な古典曲を歌います。3種類のアベ・マリアが収められているのはこのCDだけです。伴奏はメイヤー教授で、9曲のカラオケ用の曲とその歌詞カードも含まれています。このCDにはカラオケマシーン用の歌詞を含んだ映像もついています。このCDはwww.wsf.orgと、www.pocketsongs.comのPSCDG 1600として一覧に掲載されています。「奇跡の聖歌隊」ともに出かけたジョージア州での一週間の演奏旅行に続いて、グロリアはAssociation of Residential Resources in Minnesota(ARRM)の5月大会のキーノート演奏者になりました。セント・ポール(St. Paul)で開催されたこの大会には1000人以上が参加しました。この大会のハイライトはゲストとして招かれ、ピアノとアコーディオンの独奏を行い、グロリアと一緒にシューベルト(Franz Schubert)作曲の歌曲を演奏した、多才なアレック・スウィージー(Alec Sweazy)でした。ウィリアムズ症候群の音楽家達が一緒に演奏する古典を聞くことはとてもすばらしいことでした。「人生で最良の日でした」と、アレックは手紙に書いてきました。ウィリアムズ症候群の音楽家達は皆、演奏が終った後に同じ感想を持つようです。

疲れていても休憩はありません。5月の終わり、レンホフ一家はバークシャー・ヒルズ音楽アカデミー(Berkshire Hills Music Academy、BHMA)における最初の卒業生と喜びを分かち合う栄誉を得ました。とても立派で意味深い出来事でした。グロリアは個人として招かれたグループの一人でしたが、その中にはキャンプの発展に多大な貢献を行なったベルボア・テラスのオーナーであるナンシー・ゴールドバーグ(Nancy Goldberg of Belvoir Terrace)も含まれていました。関係者全員を集めてくれたことに対して、ケイ・バーノン(Kay Bernon)に感謝します。6月もグロリアにとっては休みではありませんでした。中旬になって彼女はカリフォルニア州サンディエゴに飛び、2003年6月29日にサンディエゴの中心街にある最古のコプレー音楽ホール(Copley Symphony Hall)で開催されるサンディエゴ・マスター聖歌隊とTICO交響楽団(San Diego Master Chorale and TICO Symphony Orchestra)の音楽祭に向けてのリハーサルに参加しました。グロリアは主演歌手でした。4作の歌劇からアリアを歌い、その他にも2曲歌いました。そのうちの1曲はGigiからで、バリトン歌手マーティン・ライト(Martin Wright)とのデュエットでした。グロリアはフナーレでもすばらしい歌を披露しました。歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ(Cavalleria Rusticana)」より「復活祭の合唱(Easter Hymn)」で、120人の合唱団と65人のオーケストラを従えてサントゥッツァ( Santuzza)役を演じました。

彼女はこれらの演奏をプロとしてりっぱに努め、その模様は「60 MinutesU」や、日本の最も大きなテレビ局の一つであるTBSのTVクルーによって収録されました。2004年1月7日に放送された「60 MinutesU」で、ウィリアムズ症候群の音楽家達をを取り上げたコーナーの中で5秒間だけこの演奏会の様子が放映されました。TBSのスペシャル番組は2003年11月29日に放送されました。

夏のしめくくりとしてグロリアはベルボ・アテラスで開催される最後の第10回ウィリアムズ症候群音楽芸術キャンプ(10th and final session of the WS Music and Arts Camp at Belvoir Terrace)に参加しました。グロリア達は創立時からの参加者として称えられました。これまで毎年行なわれてきたキャンプ同様、今回も充実して喜びに満ち溢れた一週間でした。この最後の音楽キャンプには3つのテレビ局が取材に訪れていました。先ほどの「60 MinutesU」とTBSに、カナダのテレビ局が加わりました。グロリアはこの冬に放送される番組にカナダからのキャンプ参加者とともに出演する予定なので、カナダのテレビ局からカナダ名誉市民の称号をもらいました。

「2002-2003年の学業年度」の締めくくりとして、8月にグロリアはメンフィスで開催された募金集めのファッションショーに参加しました。2003-2004年、グロリアは休息を取るためにゆっくりするでしょうか? そうは思いません。すでに国際的なキリスト教ラジオ放送ネットワーク(Christian radio network)において2回放送されることが決まっているし、CD販売のために本屋を回って「歌とサイン会(singings and signings)」も行ないます。大会への参加依頼ももらっています。

この一年間のグロリアの活躍を振り返って考えてみた時、グロリアが精神遅滞だと医者から言われたときの気持ちを思い出さずにはいられません。それはウィリアムズ医師がウィリアムズ症候群を記述した論文を発表する前のことです。

どうか、皆さんのお子さんが成長して音楽に興味を示した時にはこのことを思い出してください。私たちはBHMAの音楽キャンプで、才能に恵まれたたくさんの「若きグロリア」を見てきました。何かアドバイスを求めますか? もちろんアドバイスはできます。お子さんの受入準備ができていれば、良い音楽教師をつけてあげてください。あとは「練習」です!!!。」



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