「 Williams Syndrome:A Highly Musical Species 」
「 Williams Syndrome:A Highly Musical Species 」(ウイリアムス症候群:優れた
音楽的才能を持った人達 )という1時間のドキュメンタリー( EOPI 社 :米国カルフ
ォルニア州にあるテレビ局が制作)が、アメリカのインディアナポリスで開かれたハー
トランドフィルムフェスティバル(Heartland Film Festival)のドキュメンタリー部門
で賞を獲得しました(Crystal Heart Award for best full length documentary)。
このビデオは、1995年に開催された 音楽キャンプ(Williams Syndrome Music and
Arts Camp)の模様を中心に、ウイリアムス症候群の人々の持つ素晴らしい音楽的才能
が記録されています。2000曲もの歌を23ヵ国語に及ぶ原語で歌える Ms.Gloria Lenhoff
さん(WSFの副会長で、WSAの前会長 Dr. Howard Lenhoffの娘さん)の素晴らしい歌
声や、どんなに複雑なリズムも間違えずに演奏できるドラマーなどが紹介されています。
また、Dr. Oliver Sacks を始めとする専門家による、ウイリアムス症候群に関する遺伝子
的情報、言語や行動に関する特徴の解説も聞けます。この資料は、このビデオテープの日
本語訳です。川崎市にお住まいの吉川ゆかり さんに訳していただきました。(1997.4..18 作
成)
- [00:00][オリバー・サックス氏の解説]
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火曜日の夜、私と妻がコンサートに着き、コンサートが始まるやいなや、彼らは、音
楽に反応を示し、ビートのリズムを取り、正確に調和していた。そして突然気が付い
たのだ。彼らが高度に音楽的な人種だということを。
- [00:40][サックスの演奏会会場]
-
- [01:00][タイトル][レッスンの模様][オリバー・サックス氏の解説]
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私自身は、ウイリアムス症候群と言うのには抵抗があるが、ウイリアムスの人々は我々
とは違うアイデンティティーを持った人々のようだ。
- [02:00][男の子の話し]
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どんなものかはわからないが、自分で外見が見えないことはわかる・・・
- [02:10][女の子の話し]
-
ウイリアムス症候群は、障害を持っていることだと思う、例えば、足とか手とか、
- [02:20][別の女の子の話し]
-
何も恐れることは無い、幸せなことだと思う。みんなを見て。みんな(ウイリアムス
症候群なのに)、幸せでしょう。
- [02:30][女性:絵を画きながら]
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パズルみたいな物で、パズルが合えば突然分かってくるの。私は2つの心臓欠陥があ
るし、胃腸の問題、視覚と手の強調性の問題、低身長、小柄さや小さい手とか、いろ
いろなことが全部かみ合って、意味がでてくる。
- [02:50][男の子の話し]
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私は、もしチャンスがあれば、やりたいことをしたいけど、スローモーなんだ。
- [03:00][先程の女性:絵を画きながら]
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知らなければ良かったと思った時もあった。普通の人には出来て、私には出来ないこ
とがとてもいやだった。でも、何が普通で何が普通でないかと考えた。
- [03:20][キャンプ場の風景後、女の子の話し]
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ベルボア・テラスは、ウイリアムス症候群の子供達が、世界中からきたカウンセラー
から指導が受けられる一週間のキャンプだ。いろいろな活動、水泳、ミュージカル、
ダンス、美術工芸があり、とても楽しい。
- [04:10][キャンプの部屋の様子・食事風景。女性の解説]
-
ナンシー・ゴールドバーグです。ベルボア・テラスでアソシエイト・ディレクターを
しています。マサチューセッツ州レノックスで、芸術キャンプを指導しています。2
年前、ハワード・レンホフ氏から特別な人種のために音楽キャンプを運営しては、ど
うかと請われた。特別な人種というのは聞いたことがなかった。
- [04:20][グループのレッスン]
-
- [04:50][ナレーション]
-
彼らの多くは、町とかグループで住んでいた。他のウイリアムスの人達のことも知っ
ていたので、ここでは、彼らが自分と同じような友人を作り、受け入れられる。
- [05:10][コーラスのレッスン]
-
音楽的にやや恵まれた人から、とても恵まれた人まで様々なレベルの人がいる。これ
は言語的にも同じで、とてもよくしゃべれる人から、「はい・いいえ・お元気ですか・
会えてうれしいです」しか言えない人まで。
- [06:00][グロリア:青いセーターの女性:独唱]
-
グローリアは、訓練された声と自信を持っているという意味において、ここでは最も
完成された人間だ。もっとも、みんな生まれつきの演技者ではあるが・・・。
- [06:40][男性の解説:ハワード・レンホフ博士:カリフォルニア大学
アーバイン校 グロリアの父親]
-
グローリアは私の生活の中心だ。間違いはない。彼女は特別な人だ。神からの贈り物
であり、自然の宝なのだ。
- [07:00][女性の解説:シルビア・レンホフ:グロリアの母親]
-
彼女が歌いながら階段を下りてくる。3週間も雨続きで憂鬱な月曜日を迎えている時
に、ほら、グローリアが歌いながら階段を下りてくる。だから、みんな月曜日の朝は、
グローリアが必要なのだ。彼女は憂鬱な気分を吹き飛ばしてくれる。彼女は多くの困
難を認識した上で、なおかつ、彼女には素晴らしい喜びがある。
- [07:50][レンホフ博士の解説]
-
グローリアは、1951年に生まれた。ウイリアムス症候群の最初の研究論文が1961
年にニュージーランドの内科医のグループによって発表され、その主席著者がウイリ
アムス氏だった。
- [08:00][ゴードン・ビスカー:ウイリアムス症候群基金の会長 の解説]
-
症状ををまとめた者が症候群の名前を付けることが出来るが、通常、自分の名前にち
なんでつけるのでウイリアムス症候群はウイリアムス症候群になった。
- [08:10][レンホフ博士の解説]
-
論文が出版された後、彼は誰かに会うためにイギリスを訪ねているが、列車に乗るの
を見たのが彼を見た最後であった。彼が今どこにいるのかは、全く分からない。消え
てしまったのだ。ウイリアムス症候群も謎だが、ウイリアムス氏自身も謎なのだ。
- [08:30][レンホフ夫人の解説]
-
彼女の12才の誕生日にハーフサイズのアコーディオンをプレゼントしたのだが、こ
れが大革命となった。彼女はそれを持つと弾きだしたのだ。彼女は弾き方を知ってい
た。しかし、どうして彼女が知っていたのか分からない。
- [08:40][グロリアがアコーディオンを弾く。男性の解説]
-
勿論、グローリアは特別だ。第一、楽譜が読めない。それに、読めるように教えるこ
ともできない。本当にそのままなのだ。だが、このこともハンディでさえない。なぜ
なら、読むのとほとんど同じ早さで聞き取っていくからだ。面白いのは、聞き取って
例えば、ポケットの中に入れたとしよう。すると彼女は、決して忘れない。彼女が一
体何曲知っているか考えてみたこともないが、膨大な数だと思う。まったく弾かなく
て、50年後に弾いたとしても1音1音覚えているだろう。
- [10:25][レンホフ博士の解説]
-
グローリアは、実際英語を含めて23ヵ国語、22ヵ国語の外国語で歌う。どんな言
葉でも小一時間で覚えてしまいます。
- [10:50][グロリアの発声練習。女性の解説]
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彼女に特殊な音楽性があることは、すぐにわかった。素晴らしい発声もたいして教え
なくてよかった。ただもう歌った。彼女に会う度に、教える度に人生というものにつ
いて、新たな概念を授かる。それは、ウイリアムス症候群についてでもなく、歌うこ
とについてでもない。もっと深遠な人間の精神性に及んでいる。家族全員がグローリ
アの中の確かな神の使命があると感じている。この感覚をどう言ったらよいのか分か
らない。彼女自身もそのことに気が付いているのかどうか分からないが、家族全員が
この人の中に天賦の贈り物とも言える神の使命を感じている。
- [12:30][グロリアが老人ホームでアコーディオンを演奏する。解説]
-
グローリアは4、5年前、初めて老人ホームで歌い始めた。グローリアが歌うと、ご
老人達は、ぱっと明るくなり、目覚めたようになり、一緒に身体を揺らし始めた。彼
女が音楽を演奏している時、彼女は姿を変え、我々は彼女の中の魂の良いエッセンス
を得られるのだ。彼女は演奏することが好きで、あがったりしないし、他の人達と音
楽を分かち合うことを楽しんでいる。それが彼女の生き甲斐となっている。彼女は本
当に素晴らしい。グローリアは、少しの努力とウイリアムス症候群の人々を理解する
ことがもたらす良い例といえよう。
- [14:00][研究室:ウースラ・ベルーギ博士(女性)の解説]
-
私は、ウースラ・ベルーギ博士です。サルク・インスティチュート・オブ・サイエン
スの応用心臓学研究所の所長をしている。我々が初めにしたことは、とても興味深い
ものだが、ダウン症候群とウイリアムス症候群の子供達の年齢とIQを比較すること
だった。彼らが似ているからというのではなく、似ていないからだ。例えば、簡単な
方法、60秒で動物の名前を挙げるなど。ウイリアムス症候群の子供達はその年齢に
比べて驚くべき程で、一般的でないもの、アイベックス(野生のやぎ)、スマトラ・
トラ、チワワ、あほうどり等をあげる傾向がありました。他の子供達は、反対で、と
ても簡単なものを少ししか言わない。ウイリアムス症候群の子供達は全体としてとて
もお話し上手だ。
- [15:00][女性:絵を描いている]
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メリーとジョーが庭で遊んでいると、突然、大きな美しい羊がやってきて、いろいろ
なお話しをしたり、歌を歌ったりした。それがどこから来たのかわからない。ある日、
突然、青い空からやってきて、庭に降り立ったの。
- [15:20][研究室:ウースラ・ベルーギ博士(女性)の解説]
-
このようなことは、彼らのようなIQの持ち主からは期待出来るものではない。期待
もしないだろうし・・・・。
- [15:30][男性:ピアノの前で]
-
なにか、面白いことを話して欲しい?僕が子供の頃、よくものを分解したんだ。椅子
付きの手紙を書くテーブルがあったんだけど、その椅子のねじを取ってしまった。か
あさんが座ったら、バラバラになってしまった。勿論、元に戻す方法を覚えたけどね。
- [15:50][研究室:ウースラ・ベルーギ博士(女性)の解説]
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ウイリアムスの人々は、比較的、非常によく言語を他の領域から区別して認識してお
り、その事が、何故言語が特別か、どのようにして脳の中で作り上げられているか、
我々が理解している人間一般における語学の構造などの言語の特異性の鍵を示唆する
かもしれない。
- [16:10][サクソフォーンの練習風景:女性の解説]
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クリスティンは、あまり音楽の経験がなかったので、いろいろな楽器を試し、どの楽
器が好きでどの楽器が上手かを知りたかった。ピアノにはあまり興味がなく、トラン
ペットは吹く時の口の形を作るのに問題があった。サクソフォーンには興味があった
ようで、短時間に比較的良い音が出せた。
- [17:00][ピアノの練習風景:女性の解説]
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アレックスは、本当に魅力的だ。かれは、ピアノが彼の支配下にあると言ったような
身のこなしがあり、明らかにそれは教えてもらったものではない。バッハのインベン
ションをやっていて、右手、左手そして両手と弾いていたとき、突然、「あれは、な
に?」、「サクソフォーンの音よ。ピアノで見つけられる?」 その音はD#だっ
たけれども、彼は出来た。お手本を示す必要もなかった。すぐ分かった。それは明ら
かだった。
- [18:30][レンホフ博士の解説]
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私が言及していなかったウイリアムス症候群の一つの特徴に聴覚過敏症がある。音に
対する感受性だ。
- [18:35][男の子の話し]
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テープを巻く音やギアの音が聞こえる。
- [18:40][女性の話し]
-
時々、口笛が聞こえたり、犬の声が聞こえたり、鳥が聞こえたりする。ただ、聞こえ
るんだ。
- [18:50][男の子の話し]
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サイレンや警報や消防訓練や・・・。
- [19:00][シャノン・リベラ博士(女性):ウイリアムス症候群協会 の解説]
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音楽的能力は、ただの単なる聴覚能力ではない。高められた聴覚意識があると思われ、
ウイリアムス症候群の人々は、その中で生きているのだ。
- [19:10][ドレミの歌のレッスン:女性の解説]
-
この夏、私達は新しいことを始めた。ソルフェージュを教えている。ウイリアムス症
候群の生徒に良いのは、このシステムが耳で学ぶシステムだからだ。読むものではな
いからだ。私自身は、このコースでとても悪戦苦闘したが、この子達はずっと早く習
得した。
- [21:30][男性の解説]
-
みんな、当然、自分達の子供が普通の可愛い赤ちゃんであると思っているが、そうで
はないと分かった時、こころの準備が出来ていないのだ。
- [21:40][レンホフ夫人の解説]
-
生まれた時から、何か変だとは分かっていた。でも何が変か分からなかった。
- [21:45][女性の解説]
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彼女が生後2週間の時、小児科医が心臓の雑音を聞き取り、症候群、症候群、症候群
と言われ続けた。
- [21:50][夫婦の解説]
-
食事を与えるのが大変だったが、初めての子供でそれが普通の子供と違うのかどうか
分からなかった。
- [22:00][別の夫婦の解説]
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彼女は低体重で生まれた。なので、私達はその事が基本的な問題で、そのうち、成長
して克服できるだろうと思っていた。それはなかった。
- [22:10][女性の解説]
-
私は、とても悪く取った。まったく否定的だった。
- [22:15][別の女性の解説]
-
我々には、何がなんだか分からなかった。遺伝学者は写真をたくさん撮り、計測をした。
- [22:20][別の女性の話し]
-
あらゆる検査に連れていった。検査・検査・検査だった。
- [22:25][夫婦の解説]
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医者から医者へ・・・。
- [22:30][女性の解説]
-
答えが無いように思えたが、ある時、ある医者がウイリアムス症候群かもしれないと
示唆した。
- [22:40][診察室で:女性医の解説:コーリン・モリス:ネバダ大学医学部]
-
私は、コーリン・モリスです。小児科医で臨床遺伝子学者です。異常出産や精神遅滞
の子供達を対象とする Dismosology が研究対象です。過去10年間、ウイリアムス
症候群の治療と遺伝子学的根拠に専門的に集中してきました。ウイリアムス症候群は
遺伝子学的な状態で、2万分の1の確率で発生する。多くのウイリアムス症候群の子
供達を見ると皆似ていることから分かるように、奇異な顔貌と関係しており、精神遅
滞と先天的異常に関係している。特に、主に心臓病が挙げられる。心臓はポンプであ
り、心臓からでているおもな動脈分枝が大動脈だ。この大動脈弁もしくは弁の上部が
狭まる。この狭窄が起こる原因はエラスティンに欠陥があるからだ。十分なエラステ
ィンが生産されないために、弾力繊維自体が異常をきたす。エラスティンは7番染色
体上にある。染色体は遺伝子の集まりだが、エラスティンは遺伝子の中の10万分の
1の割合を占めている。ゆえに、われわれのしていることは、干し草の山から一本の
針を探すようなものかもしれない。
- [24:15][レンホフ博士の解説]
-
私と妻を含め、ほとんどの両親が妊娠期間中に何か悪いことをしたのではないかとい
う罪の意識を持っている。マティーニを飲みすぎたとか、喫煙したとか、歯医者に行
ったとか、何か原因になることをしたと。みんな、どんな悪いことをしたかという自
分自身の持論を持っている。
- [24:30][女性の解説]
-
とても恐ろしくて、私のせいで起こったのかもしれないと思った。
- [24:40][レンホフ博士の解説]
-
ウイリアムス症候群は、精子か卵子の7番染色体の一部が欠けている。とても小さな
部分なので微小欠失と呼んでいる。
- [24:50][モリス博士の解説]
-
この欠失は、突然起こる。両親の行動とは、全く関係が無い。受精時点ですでに存在
している。遺伝子的事故であり、両親に落ち度はない。
- [25:00][夫婦の解説]
-
私が子供に何か悪いことをしたと思いたくなかったので、勿論うれしかった。本当に
運命のいたずらなのだ。
- [25:10][公園で男性2人がドラムの練習]
-
「どんなドラムを持っているんだい?」
「Pearls」
「5種類だね。どんなシンバルだい?」
「Belgium」
「Belgium highhat?」
「China もあるかい?」
「Chaina は楽しいシンバルだね」
今日ここに連れてきたのは、ドラムのスティックがなくても、どこにいてもドラムが
たたけるということを見せるためだ。回りを見回すとたくさんのドラムがある。滑り
台の階段、シーソー、木や石、ぶらんこのいす・・・違った音がある。チェーンがあ
る。木がある。柱がある。もう3種類の違った音がある。この辺りで3種類の違う音
を見つけられるかい?回りにある総てのものだ。スティックさえもだ。君の靴。みん
な同じに見えても、なぜかピッチが違う。みんな違う音だ。すごくないかい? 木も
違う音がする。石も違う音がする。あそこのタイヤのブランコを試してみよう。ぜん
ぶの場所を試してみて、他の所と違う音がする。ルールなんてないんだ。叩きたい物
は何でも叩いていいんだ。それで、いい音だと思ったら、持ってきて自分のドラムに
つけるんだ。あるアーティストは、アルバムに変な音や物をのせている。タイヤのブ
ランコも次のアルバムにのるかもしれない。タイヤの音だけのアルバムをレコーディ
ングするかもしれない。
- [27:30][部屋に戻り、拍子を取る練習:男性の解説]
-
超聴覚に合わせるために、手拍子からクラスを始め、ゆっくりと彼を導いていった。
彼は、私が何か新しいことをする度に、ついてきた。興味深い点は、彼は私の手を見
ているのではなく、私の目をじっと見つめていたことだ。まるで私が何を考えている
のかを知っているような、私の考えを読んでいるように目を見つめてきた。
- [28:40][ドラムの練習]
-
彼はある種、特殊な耳を持っているようだ。普通はやらないような変化を故意にして
も、普通の変調やスタンダードなビートを変えても、彼は私の目を見ながら私と一緒
に変えてきた。普通の生徒が、完璧について来るには、私がすることを見なければい
けない。しかし彼は、一度私がひくとその通りに記憶してしまう。私を見ることもな
い。7/4で弾き始めた後、右手を4/4,それ以外を7/4のビートにしたが、彼
はついてきた。終わった後に聞いてみると、たいして長くドラムをやってきたわけで
はないと言う。私は、これをマスターするのに数年かかったのだ。かなり驚いた。あ
る意味では、腹が立つくらいだ。しかし、素晴らしい、驚異だ。
- [30:30][モリス博士の解説]
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それでも、ウイリアムス症候群であるということは、苦闘に満ちている。この子達も
自分達が普通とは違うと分かっているが、多くの場合、違いたくないと思っている。
- [30:45][男性の解説]
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ウイリアムス症候群の子供を持つということは、人生が大きく違ってくるということ
だ。例えば、4歳児のまま20年続くといった感じに。
- [31:00][女性が階段を下りてくる:女性の解説]
-
普通の両親が当たり前だと思っていることが、大きな課題である。階段の上り下りは
大事業だった。3ー4歳の頃だったが、彼女は泣き叫んだ。臨床医と理学療法士が彼
女についていて励ましたが、まったくできなかった。彼女は恐れおののき、見ていて
とても心が痛んだ。そして、ある日できたのだ。小さな課題をやり遂げることが達成
感とプライドと喜びに満ちた重要な結果となるのだ。
- [31:50][ピアノのレッスン:女性の解説]
-
どのようになるのか見たくて、かれにかなり難しいベートーベンのテンペスト・ソナ
タの第3楽章を与えた。かれのバックグラウンドは、ポップ・ミュージックで、まっ
たく合わない。
- [32:30][男の子の話し]
-
過去に他の音楽にも目を向けたが、今はカントリーミュージックが好きだから、それ
一辺倒だ。アラバマやケニー・ロジャース、クロスビー・スティル・ナッシュ・アン
ド・ヤング・・・・曲を手書きするのは難しいので、頭の中に作るようにしたら簡単
だった。
- [33:20][男の子の弾き語り:女性の解説]
-
一回目のレッスンでは、驚かされた。彼は、ピアノの前に座って、歌い上げたからだ。
彼に、「それは何?」と聞くと、僕が作ったと言ったので、驚いたわ。「いつ作った
の?」と聞くと、朝食の時に歌っていたんだ。いつもそういうことをしているんだ、
と答えた。
- [34:10][夫婦の解説]
-
ピアノの前に座った時とか、歌を作るときとか、何か楽器を弾こうとする時に、いつ
もテープレコーダーをすぐ近くに置くようにしている。必要とあらば、楽器から楽器
へ、部屋から部屋へ彼が作っているものを録音するためについて歩くことができるか
らだ。彼には、手の動きを教えてくれ、耳で聞いて弾くことを教えてくれる先生があ
る。先生は、次週持ってくるようにテーマや曲名を与えてくれる。だから、彼の宿題
とは半ダースほどの曲名やテーマのリストのことだ。私たちが起きて来て、彼が楽譜
を読みながらピアノを弾いていると思う。ところが見てみると曲名が書いてあるだけ
の白紙の紙を見ながら歩き回っているのだ。
- [35:20][男の子の話し]
-
頭の中で考えてピアノで弾き始め、歌うんだ。指でギターを押さえようとして、何か
コードを押さえようとするんだ。そんなことを全部自分でやってしまうことに本当に
驚いている。このパイプは、すべり管だ。これをすべらせて、ウィーンとか変な音を
出すんだ。音楽は、人生を通しての興味の対象だ。毎回、友達や、母や父、祖母や祖
父に精神的に表現しようとしている・・・・表現しうる全ての人に対してだ。
- [37:30][男性の解説]
-
彼は、10〜15分歌うと曲が出来てしまう。歌詞も旋律もだ。私もそういうレベル
に達することができればと思う。なぜなら、彼は4時間半も続けて、決して止まらな
い。やがてやっとやめるのだ。正に彼から音楽が溢れ出してくるのだ。
- [38:40][サックス博士の解説]
-
私は、いつも彼らの誰かに引き止められる。今朝は、やあ、大きな奴と言ってきた。
彼らは恥ずかしがり屋ではない。私自身、とても恥ずかしがり屋なのだが、彼らのよ
うな人々に対しては恥ずかしがってはいられない。彼らこそ世界中で最も恥ずかしが
り屋だといえる。
- [39:00][女の子の話し]
-
学校も好きだし、友達も好き。それにボーイフレンドさえいるのよ。
- [39:05][モリス博士の解説]
-
ウイリアムス症候群には、ウイリアムス症候群特有の人格のタイプがある。他の知能
発達遅滞の子供には見られない。
- [39:10][男の子の話し:ピアノの前で]
-
ロックグループが好きなんだ。ピンク・フロイド、CCR、グレイスフル・デイ、エ
ルビス・プレスリー・・・・
- [39:20][モリス博士の解説]
-
7番染色体の欠失がどのように人格に影響しているかわからないが、何等かの形で人
格に影響しうる染色体を探求している。
- [40:00][みんなで絵を書く:男性の解説]
-
ここに来るまでは、芸術とは落ち着いたものだという前提があり、絵画をどうにかし
て前面に据えるという最終目的があった。だが、彼らの制作は音楽に、私が持ち込ん
だカセットテープに引き付けられたようだ。ジャズの気分でジャンプしたり、踊った
り、絵筆をドラムのスティックのようにして、手を使って描いたりした。ボン・ジョ
ビ、からビートルズ、ビートルズからマック・ジェームス。ファンクでワイルドに。
この子達には、私が以前には、気が付かなかった多くのことができるのだ。彼らは、
ある種の知識の流れを持っており、良い物によいタイミングで出会うと、それが開放
され、水門が開くように、突如として素晴らしい物が飛び出してくるのだ。
- [42:10][男性の解説]
-
人々は、もし、ウイリアムス症候群の治療法が見つかったらどうするだろうという。
私が案じているのは、その全てを直したくないと言うことだ。
- [42:20][モリス博士の解説]
-
現在のところ、治す事は出来ない。何故なら、今は欠如している遺伝子物資を置き換
えることができないからだ。今のところ、焦点は、遺伝子治療に向けられており、重
病を引き起こす原因となる酵素やタンパク質センターの欠如の入れ替えなどを試みて
いる。望ましいかどうかは別にして、いつか、理想的な遺伝子が得られるチャンスが
有るとは思えない。
- [43:30][歌のレッスン:女性の解説]
-
メーガンは、魅力的な女性だ。年の割にはとても奥深い。今週は3回しかボイス・ト
レーニングをしていないが、実際初回のレッスンでとても早く1曲全部を学んでしま
った。彼女は、自然で天性のフレージングを持っている。そこには、音楽以上の物が
ある。スープのように飲み込むと内側から暖められ、滋養がある。本当に大きな心を
持っている。
- [45:20][女性の解説]
-
彼女は、全てを愛していて、物事に対してとても美しい見方をする。非常に繊細で情
け深く、慈愛に満ちている。本当に近くにいて欲しい人間だ。
- [45:50][男性の解説]
-
彼女のすること全てに、深い感情が感じられる。表面的な対処をするのではなく、彼
女の存在の奥深いところから関っているのだ。だから、うれしいことがあると、もう、
爪先から目まで、口まで表われ、ぱっと広がる。
- [46:30][女性の解説]
-
彼女が怒った時は、もう、それは怒っている。心配な時や不安な時は、倍増してしま
う。驚かされると、もうその恐怖をどうしていいのかわからなくなってしまう。メー
ガンは、生涯ずっとウイリアムス症候群であるという事実を受け入れることができな
かった。しかし、このこともやがて乗り越えていくだろう。そして、同年齢の子供と
は違っていくだろう。
- [47:50][女性の解説]
-
実のところ、日曜日の朝に教会へ行き座っていたところ、突然、今週こそ、答えが、
方向が、希望が生まれる時なのだと。私たちが両親として、メーガンが人生を歩んで
行くのにどの方向が良いのかを知るときなのだと。ぱっと浮かんできたのだ。全ての
ことが現実になったと。賜物は、偉大だ。
- [48:40][メーガンの話し]
-
このキャンプについても、もっと学んだし、みんなになにがあって、どんな問題を抱
えているかといったこともたくさん学んだからとてもよかった。
- [49:20][輪を使った体操の風景]
-
- [50:30][グロリアの独唱:女性の解説]
-
2週間前にグロリアに歌曲を送った。大変難しい曲だった。練習して最初のリハーサ
ルで彼女は大変上手に歌った。信じられない。ジュリアード音楽院を卒業したような
訓練された歌手でも難しい。音楽は素晴らしい。
- [52:20][演奏会開会の挨拶]
-
夜のベルボア演奏会へようこそ
- [54:20][ダンス]
-
- [54:50][女性の解説]
-
いつも、大学に行きたいと強調してきたが、みんなは、この子は夢を持っているけど、
神様だけがお聞きになり、実現しないだろうという。今は、レンホフ博士によると、
ウイリアムスの子供のための大学ができるそうだ。
- [55:00][レンホフ博士の解説]
-
我々は、この音楽的にとても恵まれた人々に、居住設備のある大学を作りたい。カリ
フォルニア大学の強力なサポートを得て、できれば5年以内にキャンパス内に老若を
問わないウイリアムス症候群の人々の大学を作りたい。彼らがここに来てトレーニン
グを受ける。住宅も用意して、ここに住む事になるのだ。
- [55:30][女性の解説]
-
もし、大学のことが本当になれば、事業として関っていくことになるだろう。
- [55:40][サックス博士の解説]
-
「音楽的で社交的」だが、「精神薄弱で弱視」といったような枠でくくるような分け
方はしたくない。確かにそうかもしれないが、それだけでは不十分だ。彼らは別の人
種なのだ。
- [56:10][女性の解説]
-
もし、私たちがみんな、ウイリアムスの人々と暮らせたら、すごいと思わない?笑う
事が出来て、お互いを思いやり、気遣う。そこには、なにか、メッセージがあると思う。
- [56:40][女性の解説]
-
ウイリアムスの人々は、ウイリアムスの人々と一緒にいるべきだと思う。そうすれば、
お互いの喜びや痛み、希望や音楽を分かち合える。特に、音楽が。それこそが、私た
ちの人生そのものだからだ。
- [57:00][男の子の話し]
-
僕はここにいたい。ここ以外のところには、行きたくないから。いつかは気付くだろ
うから。
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