ベルボア・テラス 2002



米国のウィリアムズ症候群協会のニュースレターに掲載されていました。アメリカで今年開催された音楽キャンプの報告です。

(2002年11月)

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BELVIOR TERRACE 2002

By Lori Sweazy, Camp Coordinator
"Heart to Heart", Volume 19 Number 3, September 2002, Page 16

丘は生き生きとした音楽に満ち溢れていました。その丘はバークシャー(Berkshire)地方にあり、その頂上でベルボア・テラス音楽芸術キャンプ(Belvior Terrace Music and Fine Art Camp)が開催されています。キャンプのディレクターであるナンシー・ゴールドバーグ(Nancy Goldberg)と彼女の素晴らしいスタッフの献身的な努力や施設のおかげで、ベルボア・テラスで過ごす「ウィリアムズ週間」は、楽しさと音楽とおいしい食事だけではない何かが感じられます。

キャンプに到着した初日は、キャンパーにも親にも、そしてスタッフにとってもいろいろな思いが交錯する日です。これまでに何度もキャンプを経験した人は、級友達との再会を喜び合い、懐かしい故郷に帰ってきたような感じと、これから始る一週間に対する興奮が入り混じった感情を抱きます。始めてキャンプに参加した人は始めのうちはためらいがちですが、すぐに打ち解けてキャンプの日常に溶けこみます。52人のスタッフたちのほとんどは今回が初めてキャンプですが、心をひらいき、これまで経験したことの無い何かを得られるであろうこの一週間に期待をしています。

今年はアメリカとカナダから53人のキャンパーが参加しました。37人が経験者で16人は初めて、男性が35人、女性が18人です。年齢範囲は12歳から39歳です。日課として、個人毎の音楽レッスンが2クラスとコーラス及び音楽劇を行い、芸術か水泳のどちらかが隔日で行われます。さらに、ダンス、テニス、バンドを選択することもできます。

16人の両親がキャンプに泊まり、何組かは近くに宿泊しました。私たちにとってこの一週間は言葉にできないくらいの価値があります。子どもたちが見せてくれる素晴らしい才能、カウンセラーや相部屋の仲間たちとの絆を目の当たりにできることは、私たちにとって心の安らぎです。食事や夕方の活動の時に子どもたちと会えますが、クラスを直接参観することや活動に加わることはできません。私たち親にも相部屋の仲間ができるでの、時間を忘れて語りあったりお互いから学び会うことができます。ある日の朝、バークシャーヒルズ音楽アカデミー(Berkshire Hills Music Academy)の責任者から話を聞く機会があり、キャンプの後半には車に乗り合わせてその学校を訪れ、施設を見学する機会もありました。クラスや食事の合間にキャンプのスタッフと語り合うこともできました。彼らは、キャンプで学んだこと、家庭でできるレッスンに関して気が付いたことや助言を喜んで話してくれました。親たちの多くにとってその一週間は、気が抜けない家庭での日常生活から開放されてリラックスできる息抜きになりました。

キャンパーたちのユニークな音楽的才能を学ぶために毎年このキャンプには多くの訪問者があります。今年の訪問者には、日本から根津知佳子教育学助教授とスペインから音楽教師のマルタ・デ・カストロ氏(Marta de Castro)が含まれています。二人とも母国のウィリアムズ症候群の人たちにここと同じようなキャンプ経験を提供するサポート活動をしています。さらに、フリーのレポーターがここで数日間を過ごし、「悩みと才能を同時に有する人たちのための音楽キャンプ(A Music Camp for Those Afflicted but Gifted, Too)」という記事を書き、2002年8月26日のニューヨークタイムス(New York Times)に掲載されました。National Geographic Televisionもキャンプの期間の大部分にわたって撮影とキャンパーや両親やスタッフへのインタビューを行いました。National Geographic Todayの一部として2〜6ヶ月以内に放送されるでしょう。

夕方はキャンプファイアー・発表会・スタッフの独奏会・David Grover Bandのコンサートやディスコダンスなど皆が楽しめる時間です。その活動が終った後キャンパーは部屋に戻りますが、親たちは集まってくつろぎ、1日の出来事や子どもの将来を語り合ったり、あるいはただただ笑顔で時間を過ごします。

1995年と1996年にウィリアムズキャンプで教えた芸術教師のマーク・デニス(Marc Dennis)は、私たちの子どもにはこれまで知られていない絵の才能があるという新しい考え方を取り、キャンパーたちが書いた絵がその証拠だと考えています。

今年もすばらしい音楽教師が参加し、家庭に帰ったあと次の一年間に取り組める新しい何かを生徒たちに教えました。多くの生徒達はほんの短い間に学んで身に付いたものに驚くとともにそれを誇りに思っています。ブライス・ヒル(Bryce Hill)は最後の夜に行われる3本のミニミュージカル(サウンドオブミュージック、南太平洋、王様と私)の実行責任者です。6日間という短い期間に彼の指導によって達成された進歩は驚くべきもので、すべてのキャンパーたちに輝ける機会が与えられます。最後の夜には、コーラスとこの一週間の間に結成された5組のバンドも演奏します。長いけれどもとても楽しい発表会です。キャンパーはキャンプを記念した「"Belvior Star"ベルボアのスター」と書かれた小さなトロフィーと土産をもらいます。みんなとても幸せです。

キャンプの「音」が懐かしく思い出されることでしょう。すぐ近で聞こえる合唱・玄関のドラム・丘を登って行く太鼓・手すりを叩くリズム・ピアノや声のレッスン・プールから聞こえる歓声・話し声・歌声・レッスンの合間に聞こえるキャンパーの笑い声。勇気付けられ忘れられない一週間でした。



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