ウイリアムズ症候群との出会い



TBSテレビ 川口直美

番組で、ウイリアムズの子たちが集うベルボアの音楽キャンプの取材をしたとき、わずか一週間のあいだいに、私は、何度号泣したことでしょう・・・。

私は、生命スペシャル「人間とはなんだ!?」 という番組の制作をする上で、“人間の本質”というものに関して、科学の方面から、哲学の方面からといろいろと考えました。その際に思い出したのが、私にとっての20年前の一つの事件でした。「ねむの木学園」の展覧会イベントに行ったときのことです。そこで学園の子たちが合唱をしたのですが、それを目の前にしたとき、私は号泣し、嗚咽を止められずその場にしゃがみこんでしまいました。あのときの涙は、きっと、人の、光を放つ純粋でむき出しの心に触れたときの涙だったのではないかと感じました。

その体験がどうしても忘れられず、障害の方々をいろいろ調べるうち、初めて知ったのが、「ウイリアムズ症候群」でした。アメリカの科学誌や、ウェブサイト、特に杉本雅彦さんのウイリアムズノートには膨大な記事やリンクがあり資料を読み漁りました。そこで出会ったのが、“妖精のような”“天使のような”という表現と、愛にあふれた親御さんたちのメッセージです。ますます興味をもち、そしてベルボアの音楽キャンプを取材させていただくことになりました。

実際は、不安でいっぱいでした。しかし、そこで出会ったウイリアムズの子たちは、資料やビデオで見た以上に、私にとっては衝撃でした。こんなにも人を疑うことがない人たちがいるのか、こんなにもお互いをいたわりあう人たちがいるのか、そして、こんなにも傷つきやすい人たちがいるのか・・・。

そこで再び、あるウイリアムズの女の子が弾くピアノを目の当たりにして(決してうまいわけではないのです。使う指は一本でぎこちないのです。)それでも彼女の弾く音を聞いたとき、またしても涙がとめどなく流れてしまいました。

・・・そして思ったのです。むき出しの心とは、愛であると。

そう思わせてくれたのは、キャンプに参加していた子たちの親御さんたちと、音楽の先生はじめとするスタッフです。私は、ウイリアムズの子たちと同じくらいかそれ以上に親御さんたちのあたたかさ、心の深さに感動していました。キャンプは愛につつまれていました。人間の素晴らしさを、ガツンと見せつけられたのです。

そして、同時に、むき出しの心は、とても傷つきやすく、人一倍、愛を必要としているのだとも知りました。

キャンプでも、とびきり魅力的だったのが、ベンです。ベルボアキャンプの最終日、別れのときに号泣していた私を、「泣きたいときには泣けばいいんだよ」と慰めてくれたのが、今回来日のベンです。

取材に関しては、快くお話を聞かせてくれた杉本さん、そして、こうちゃんに心から感謝しています。

私は、20年近くテレビ番組の制作をしていますが、この取材は、決して忘れることのできない、一生の宝物です。どう表現していいのかわかりませんが、ほんとうに、宝物なのです。

出会えた皆に、そして、何かとお声をかけてくださる三重大学の根津さんに、とても、とても感謝しています。

(2008年3月)



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