鈴木メソッドでピアノをならうウイリアムス症候群の子供



「For The Love Of Music」は、米国の Williams Syndrome Associatione (WSA) が作成 したビデオテープのタイトルです。立花さんが WSA から購入されたました。ウイリアム ス症候群の子供が鈴木メソッドでピアノを習う様子が8分間記録されています。
下記のスクリプトは、このビデオテープの内容を訳したものです。完全な逐語訳には なっていませんが、大まかな内容を示しています。


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タイトル:For The Love Of Music

タイトル:鈴木メソッドでピアノを習うウイリアムス症候群の子供

タイトル:ジョン リベラ:ピアノを習う生徒

私は、シャロン・リベラです。ジョンの母親です。ジョンが3歳の時のことですが、 彼はほとんど喋れませんでした。心配してボストンこども病院に連れていって検査を受け ました。忘れることができない思い出は、モーテルに宿泊して3日間検査を受けた最後の 日のことです。モーテルを出る時にジョンが何かしゃべっていました。主人が言いました。 「ほら、聞いてごらん。ジョンが[メリーさんの羊]を歌っているよ」。[メリーさんの 羊]の全曲を歌いました。それまで一度もしゃべったことはありませんでした。それがジ ョンが音楽に興味を示した最初の出来事でした。

私は、フリッガ・スコットです。ジョンのピアノの教師です。鈴木メソッドを使って 教えています。鈴木メソッドは基本的な教育方法として、「鈴木 鎮一(しんいち)」とい う日本人の教育者によって作られました。母国語を覚えるのと同じ方法を使います。つま り、小さな子供が一つずつ単語を覚えるように、楽器を学ぶ場合も、一度に少しずつ小さ なパートを練習していき、最後にまとまった曲にします。

  鈴木メソッドは、ただ楽器の演奏を教えるという教育法だけではなく、子供の持って いるいろいろな能力を引き出す教育法です。3歳から6歳という非常に小さい時から楽器 の演奏を教える事ができます。また小さければ小さいほど、教えやすいのです。子供は習 うだけの能力が備わっています。親が練習に参加するということが非常に大切です。親は、 子供が自分で基礎練習している間もそばにいなければいけません。子供と一緒に練習をす るのです。

  この練習法では、どんなに小さな進歩でも常に誉めるという肯定的な反応を与えなが ら練習をたくさん繰返します。楽しく演奏するという雰囲気をつくり、もう一度やってみ ようという気分にさせることが大切です。楽譜を読むことを教える前に、耳で聞く能力を 養う事に力を入れます。時間はかかりますが、そのうちに楽譜を見ながら同時に弾く事が できるようになります。

  最初、1年生のジョンが来た時には、彼が集中できる短い時間しか練習を行いません でした。ジョンが疲れたら練習をやめました。ジョンがいやがることを強要したりしませ ん。大きくなってからは、集中できる時間も長くなり、今では45分間練習を続けること ができるようになりました。

  今では、ジョンの人生において音楽が重要な位置をしめるようになったと確信してい ます。ピアノを弾いたり演奏会に参加するだけではなく、学校のバンドでサキソフォーン を吹いたり、教会の聖歌隊に参加したりする機会ができました。ほんとうに音楽はジョン の人生において重要な位置をしめています。

「この長い線が何かわかる?」
「えーと」
「この右側のペダルを踏むことを示しているのよ。」

(シャロン・リベラの話し)

鈴木メソッドについては、まったく知りませんでした。しかし、ウイリアムス症候群 の子供の母親が書いた記事を読みました。彼女の息子は、鈴木メソッドでピアノを習い、 たいへんうまくいったと書いています。耳で習う方法だからです。私はこの点が気に入り ました。ジョンもたいへんいい耳を持っています。私の友人が鈴木メソッドでバイオリン を習っていました。友人はジョンのことを知っていましたので、ぜひ鈴木メソッドを考え てみるべきだと言ってくれました。練習をして曲を弾けるようになると、教会でピアノを 弾いたり、教会の聖歌隊に参加したりできるようになりました。そのことを誇りに思いま す。ジョンも誇りに思っていることでしょう。

「一度も楽譜を見ずにできたよ」
「そうね。では、この初めて見る曲を練習してね。」
「これは来週の曲だね」



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