Williams症候群に対する音楽療法
杉山由利子,安原昭博
関西医科大学附属香里病院小児科
脳と発達(日本小児神経学会機関紙)33巻 総会号 (2001)
【目的】
Williams症候群(WS)は心血管異常、発達遅滞を伴い、妖精様顧貌の特徴を持つ。ま
た、音の短期記憶能力が高い事が知られ、中には音楽に非凡な才能を待った症例の報
告もされている。本症候群に対する音楽療法を実施し、音楽療法の有効性を検討した。
【対象・方法】
対象は当院へ通院中の3名(男児2名、・女児1名)で、年齢はセッション開始時1歳
8か月、1歳10か月、3歳9か月であった。月3回、1回30分の能動的音楽療法個人
セッションを、各症例に27回(約1年間)施行した。独自の音楽療法評価表を用いて、
聴く事、演奏する事、歌う事、微細運動、言語、対人関係社・会性性の6項目につい
て評価し、評価点の変化を示した。評価点は健常児の発達月齢をあらわしている。
【結果】
言語発達の面では、3例とも加療前は口を閉じたままの特異な発声であったが、どの症
例も音楽療法を始めて2か月程でロをあけた発声に変化し、その後なん語、音声模倣
を経て、全ての症例が約1年のセッション中に有意語を発語した。評価点数の変化を
平均すると聴く事12.2か月(R2=0.94)、演奏する事16.2か月(R2=0.962)、歌う事16.6
か月(R2=0.978)、微細運動7.4か月(R2=0.970)、言語8.5か月(R2=0.937)、対人関
係・社会性12.1か月(R2=0.949)の向上を認めた。
【考察】
WSは比較的良好な言語能力を持つと言われているが、幼児期には言語発達の遅れが目
立つ。この時期には言語刺激が重要であり、歌による音声アプローチや即興演奏によ
る音でのやりとりは効果がある。またダンスや楽器済奏、絵描き歌は、粗大-微細運動
の協調性、視覚運動系の能力を発達させる効果があると考えられる。また、音楽活動
における集中力は、生活面、教育面にも活かす事が可能である。
(2001年9月)
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