片耳の難聴を指摘されている一重複障害児の「音との係わり」と「人との係わり」
東北大学大学院教育学研究科研究年報第54集・第2号(2006年、403〜418ページ)に収録されている「音を活用した重症心身障害児(者)への教育・療育的対応に関する研究動向」(中村友亮、川住隆一:東北大学大学院教育学研究科)内の408ページ、411ページ、415ページにある記述から転用しました。
(2008年5月)
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重度・重複障害児の事例研究(第二十集:1997)−「音との係わり」に視点をおいて −
30-36ページ
国立特殊教育総合研究所重複障害教育研究部
川住隆一
(408ページから)
ウィリアムス症候群児を音や音楽への興味を糸口として、本児の「音との係わり」、および「人との係わり」を促していった実践経過をしました。キーボードやCDプレーヤーの音や、生活音・自然音等を対象として「音や音楽を聴く」、ハンドベルやギターや太鼓等のさまざまな楽器を用いた「種々の楽器で音を出す」、身体接触などをしつつ「人の声を聴く」といった経過で取り組みが進められた結果、本児が種々の音や音楽に耳を傾ける行為が種々の音を出すようガイドすることの前提となったこと、身体接触を伴った状況では、人の声に対して音楽とは異なった聴き方であったこと等が示された。
(410ページから)
「リズミカルな曲を聴きながら声を出し両手を振って身体を動かしたり、ばちを握らせると不安定な持ち方ながら木琴を叩く」といった音楽聴取による身体表出の活発化が音楽表現に結びついたことや、「(エナジーチャイム用の)棒を握らせると大人とともに振ったり、あるいは、自ら振って音を出す。」といった音表出による関わり手とのやり取りが示されている。
(415ページから)
- 対象者:
Williams症候群・点頭てんかん・運動発達遅滞・外斜視・聴力損失(暦年齢7歳)
- 目的:
Williams症候群の男児における、他者との身体接触等を伴った活動による「人との係わり」、楽器の音や音楽を聴いたり、自身で種々の楽器に働きかける活動による「音との係わり」の整理・検討
- 評価方法:
対象児の音との係わりの経過を音や音楽を聞くこと、種々の楽器で音を出すこと、人の声を聞くことの3つの整理した上で、各々での人との係わりについて検討
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