(1998年9月)
覚えておられると思いますが、15才の娘ゾーイにはどのような「職場実習」が適し
ているか助言が欲しいという内容のメールを数ヶ月前メーリングリストに出しました。学
校の養護学級(the Support Unit)の子供たちに、様々な仕事を1人で経験させるという
5日間のプログラムがあり、ゾーイも今年の6月に参加しました。
皆さんから頂いた助言をまとめ、ゾーイの「職場実習」に適していると考えられる仕
事の内容を書いた手紙を教師に出しました。そこには、店のあいさつ係(本屋やトイザラ
スなど)、老人ホームやデイケアセンターのお年寄りや薄弱者の作業療法活動の補助役や話
し相手等を挙げました。ゾーイの体力を考えると、スーパーマーケットのバックヤードで
重い荷物を扱うような仕事は向かないだろうとも強調しておきました。
それにもかかわらず、学校の先生はターゲットストア(訳者注:Target Store。大規
模スーパーマーケットのチェーン店)の婦人服売り場で、8:30から5:30まで5日
間働くと言う仕事を割り振りました。労働時間の長さと、管理者がいない場所で仕事を継
続できるかどうかが心配でした。しかし、ゾーイは「本物の仕事」ができることにたいへ
ん感激していたので、私もその気になってきりっとしたパンツと白いブラウスと新しい靴
を買いに出かけました。初日にその服でドレスアップした姿はとても素敵に見えたし、彼
女自身はとても感激していました。
夢のような最初の日が終わって家に帰ってきたとき、ゾーイは仕事はとても楽しいの
で明日が待ち遠しいと言いました。次の日に衝撃が襲ってきました。学校の先生が電話を
かけてきて、ターゲットからたった今(2日目の午前中10時頃)電話があったと言いま
した。内容は、ゾーイが与えられた執務場所にいないであちこち店の中を見て回るので、
「職場実習」にならないということでした。そのため、ゾーイは無給の「職場実習」の2
日目を終了した後、残りの実習予定はキャンセルされました。
私は打ちのめされました。ゾーイがこのことをどのように受け止めるか気になりまし
た。その時に先生から聞かれたことは、この後どうすべきかと、残った3日間の「職場実
習」のために、直ちにどのような仕事を見つけられるかということでした。ターゲットが
もっと寛容さを示さなかったことや、バックヤードでのコートハンガーの整理のような仕
事を与えなかったことに怒りを感じました。そのような仕事でもゾーイは喜んでやったこ
とでしょう。現実的には、1日半くらい様子を見たあと、徐々に厳しい仕事に挑戦させら
れなかったのだろうかとも思いました。
ターゲットの言ったことはゾーイに伝えないで、残り3日間の予定をこなせるような
養護ホームなどを探してみてくれるように先生に伝えました。運良くある養護ホームが次
の日からゾーイを受け入れることを認めてくれました。そこで私は、この養護ホームで急
に手伝いの人が必要になったので、ゾーイなら明日から行ってあげられるね、という「善
意のうそ」をつきました。幸いなことに、ゾーイはこの養護ホームへ手伝いに行くことに
同意しました。その日の午後、私は養護ホームに出かけて行って、ゾーイの長所やどのよ
うな仕事が彼女に向いているかを自ら説明しました。養護ホーム側は、食事やお茶を運ぶ
手伝いをしてもらおうと考えていたようですが(その光景を想像してみました??!!)、
率直に言って、この仕事はゾーイには向いていないと伝えました。彼等は、理学療法士や
行動療法士とペアを組ませることに同意してくれました。
とにかく、長い話を短くすると(長話が多くてごめんなさい。これも私には良い訓練
ですね??)、ゾーイはお年寄りのためにピアノを弾いたり、おしゃべりをしたり、手や
足のアロマセラピー・マッサージを施したりして残りの3日間を過ごしました。養護ホー
ムのスタッフはゾーイを可愛がってくれたし、入所者たちもゾーイに好意を持ってくれま
した。ゾーイも最高の時間を過ごせたと言っています。スタッフによると、ゾーイには痴
呆老人を落ち着かせる力があったようです。話はこれですべてです。最後はうまくいきま
した。
先生は両親の提案にもっと耳を傾けるべきだと感じています。そして、学校が斡旋し
てくれる次の「職場実習」の時には、もっとはっきりと自分の意見を主張しようと考えて
います。
やれやれ
イングリッド(Ingrid)