神経疾患や神経筋疾患の子どもはインフルエンザ注射が必要である



 米国にあるウィリアムズ症候群のメーリングリストで紹介されていた記事です。オリジナルは下記ホームページに英文で掲載されています。

http://www.forbes.com/health/feeds/hscout/2005/11/01/hscout528879.html

(2005年11月)

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Kids With Neurological, Neuromuscular Diseases Need Flu Shot

By Serena Gordon
HealthDay Reporter
TUESDAY, Nov. 1 (HealthDay News)

 11月1日(火)(HealthDay News)、アメリカ健康局はすでに、糖尿病・心臓病・肺疾患などの慢性疾患を持っている子どもはインフルエンザワクチンを摂取すべきだと推奨しているが、最近の研究の結果によれば、このリストに新たなグループ、すなわち神経疾患あるいは神経筋疾患(neurological or neuromuscular diseases:NNMD)を持つ子ども達を加えるべきだとの報告がされた。

 フィラデルフィア子ども病院(Children's Hospital of Philadelphia)と米国疾病管理予防センター(the U.S. Centers for Disease Control and Prevention)が行った研究によれば、これらの子ども達は重篤なインフルエンザ合併症の危険にさらされていることがその理由である。実際にこの研究によれば、NNMDの子ども達はインフルエンザによる呼吸不全のリスクが6倍になることが判明した。

 「研究室でインフルエンザにかかっていると認められた子ども達のうち最も呼吸不全になる可能性が高いのは、喘息以外の肺疾患・心疾患・NNMDの3種類である」と、この研究筆頭著者であり、子ども病院の一般小児科の内科医であるロン・カレン医師(Dr. Ron Keren)は言う。

 この研究報告は11月2日付けのAmerican Medical Association誌で紹介された。

 カレンによればNNMDには脳性まひ・水頭症・筋ジストロフィー・てんかんなどが含まれる。肺疾患には嚢胞性線維症・未熟性慢性肺疾患(chronic lung disease from prematurity)が、心疾患には先天性心臓疾患・不整脈・その他の器質性あるいは機能性心疾患が含まれる。

 流行している菌の強さしだいでアメリカ人の5人から20人に1人が毎年インフルエンザで倒れる。CDCによれば平均的にはアメリカでは毎年36000人がインフルエンザの合併症で死亡している。

 心疾患や肺疾患の子ども達はCDCが作成しているインフルエンザに厳重に注意すべき人々のリストにすでに含まれていたが、CDCの研究者はNNMD・胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease (GERD))・未成熟の経歴をもつ子ども達がインフルエンザの合併症による死亡率が増加していることに気付いたとカレンは言う。

 これまでハイリスクグループと言われていた病気に加えてこれらの病気によりリスクを評価するために、カレンと彼の同僚は4年間に渡って研究対象として適格なインフルエンザにかかった745人の子ども達のデータを集めた。

 これらの子どものうち322人は少なくとも一種類の慢性疾患を持っていた。最も多かったのは喘息で、24パーセントがこの病気の経験があった。3パーセントは未成熟、12パーセントはNNMD、14パーセントは胃食道逆流症であった。

 子ども達の3分の2は呼吸不全を発症しており、呼吸を楽にするために人工呼吸器が必要だった。

 研究者はNNMDの子ども達が最も呼吸不全を引き起こしやすいことを発見した。彼らはこれらの症状を持っていない子ども達に比べて呼吸不全に関して6倍のリスクがあった。喘息以外の肺疾患の子ども達は5倍近いリスクが、心疾患の子どもは4倍のリスクがあった。

 「NNMDに関する結果は驚くべきもので、この病気に注目すべきである」と、カレンは言う。しかし、「NNMDの子どもたちは呼吸器の筋肉が弱く、分泌物をうまく処理できない場合が多いことを考えると、実際に驚くにはあたらない」。

 統計的モデルを使ったところ、研究者たちはインフルエンザにかかったNNMDの子どもの10パーセントが呼吸不全になるリスクがあることがわかった。

 この研究結果に対応するために、CDCはこの研究結果を内部の免疫化基準諮問委員会(Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP))に報告した、とカレンは言う。ACIPはハイリスクに分類されるこども達の慢性疾患リストに加えることを決定した。

 現実問題としては? 「もしあなたのお子さんが慢性心疾患を持っているなら、医者に行って毎年インフルエンザワクチンを打つことが必要だ。」

 ミシガン州ロイヤル・オークにあるビューモント病院(Beaumont Hospital in Royal Oak, Mich.)に勤務する感染性疾患の専門家であるグラハム・クラザン医師(Dr. Graham Krasan)は、忘れられがちなこととして、自分自身も注射をすることを付け加えた。

 「これらのハイリスクの子ども達は免疫が出来たとしてもインフルエンザには弱い可能性がある。インフルエンザを封じ込めるためのよりよい方法は、こどもの周囲にいる人全員に免疫を与えることである」と、彼は言う。

 カレンとクラザンは、インフルエンザ発症初期に抗ウイルス薬を与えればNNMDの子どもたちの呼吸不全の防止に効果があるかどうかを調査することが次の目標だと話す。



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