ソーク研究所は国立小児保健発育研究所からウィリアムズ症候群の研究のために550万ドルの助成金を受け取った



NIH awards Salk Institute $5.5 million grant to study Williams syndrome

Salk News
May 20, 2011

アースラ・ベルージ(Ursula Bellugi)、ソーク生物学研究所の認知神経科学研究所の教授兼ディレクターが率いる多施設共同チームは、ウィリアムズ症候群をモデルとして使用して社会的行動とその基礎となる神経生物学と分子遺伝学をリンクささえることを目的として国立小児保健発育研究所(NICHD)から550万ドルにおよぶプログラムプロジェクトの助成金を授与された。

「脳がどのように社会的情報を処理し、それを学習やその他の形式の知覚とどのように統合するかは論的神経科学における主要な未解決課題の一つです」とベルージは述べた。 「社会的神経科学への新たなアプローチの基盤としてウィリアムズ症候群を採用することは刺激的でありとても有望です。その理由の一つはその遺伝的な根拠が明確に理解されていることと、認知の長所と短所およびいくつかの不可解な謎の織り成す独特のパターンが存在することです。」

ウィリアムズ症候群は、精子細胞や卵細胞が形成される際の組換えの失敗に起因する。その結果、ウィリアムズ症候群のほぼ全員がまったく同じ遺伝子欠失(第7染色体の2つのコピーの片方から25-28個の遺伝子が欠失している)を持っている。また、障害を持つ大部分の人が欠失している遺伝子のうち、1つ以上の遺伝子を保持している稀な患者のケースもある。

ウィリアムズ症候群の子どもたちは無生物より人間のほうにはるかに興味と理解を示す。数々の健康上の問題と全般的に低い知能指数にもかかわらず、彼らはとても社交的で、否応なく見知らぬ人にひきつけられ、積極的にアイコンタクトする。子どもたちは自分の周りの視覚世界に困惑している。自転車を描くように求められると、彼らはすべての部分を表示するが、それらをページ全体にバラバラに描く。これがベルージと彼女の共同研究が対象としている精神的な長所と短所の奇妙な組み合わせであり、彼らはこれを研究することで遺伝子と社会的行動の間の関連を紐解くことができると期待している。

「人間の社会的行動の組織メカニズムや経路を理解することは様々な精神疾患にとって重要になります」とベルージは述べている。 「ウィリアムズ症候群を理解することによって、自閉症などの他の発達障害への新たな洞察を得られることが期待されます。」

この助成金は、長年継続しているNICHDの資金プログラムプロジェクトの傘下で行われてきたユニークで非常に成功した科学的な共同事業の最新の展開であり、この種の分野では最初のものになる。ベルージをリーダとした社会的認知、幹細胞生物学、神経構造、神経画像などの異なる分野で活躍する研究者たちのチームは、ウィリアムズ症候群に関して社会的行動の遺伝的基礎に潜む謎の解明に手がかりを提供できると考えている。

参加している研究者

Salk Institute for Biological Studies
Ursula Bellugi (Program Director)
Fred Gage
Terry Sejnowski

University of California, San Diego
Katerina Semendefari
Alysson Muotri
Eric Halgren

University of Utah
Julie Korenberg

(2011年8月)



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