正常児の場合と比較したウイリアムズ症候群、ダウン症候群、非症候群的発達遅滞児の母親の精神的ストレス
資料2-X-02「ウイリアムズ症候群、ダウン症候群、非器質的発達遅滞児及び正常児の母親
の精神的ストレス」の基となった論文と思われます。
(2002年1月)
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Maternal stress among mothers of children with Williams-Beuren syndrome, Down's
syndrome and mental retardation of non-syndromal etiology in comparison to mothers
of non-disabled children
Gosch A.
Universitats-Klinikum der Christian-Albrechts-Universitat zu Kiel, Klinik fur
Allgemeine Padiatrie, Padiatrische Psychologie. Gosch@pediatrics.uni-kiel.de
Z Kinder Jugendpsychiatr Psychother 2001 Nov;29(4):285-95
目的:
本研究は、異なる原因(ウィリアムズ症候群:WS、ダウン症候群:DS、原因を異にす
る精神遅滞:MR)による精神遅滞を有する子ども及び正常な子ども(MA)の母親が受
けるストレスの量を評価した。
手法:
85人の母親が親ストレス指標(Parenting Stress Index:PSI)と児童行動チェックリ
スト(Child Behavior Checklist:CBCL)に回答した。子どもの年齢・性別・WISC-R の
言語理解力を一致させたグループを構成した。子どもの精神年齢(WISC-R)及び家庭
の社会経済的レベルに関するデータが集められた。
結果:
PSIの結果からは子どもの領域(Child Domain)には有意な違いが見られたが、親の領
域には見られなかった。子どもの領域において、WSとDSの子どもの母親は受容尺度
(acceptance scale)と苦労尺度(demandingness scale)において高い値を示し、MR
の子どもの母親はMAの子どもの母親より受容スケールで高い値を示した。さらに、WS
の子どもの母親は多動(hyperactivity)・情動(mood)・適応(adaptability)の尺度
で最高の値を示した。どのグループも自分の子どもに対する経験から学ぶレベル
(revel of experienced reinforcement from their children)には違いが見られなか
った。 副尺度や社会的孤立に関して親の領域においては違いは見られなかった。DSの
母親は意気消沈(depression)・能力感(sense of competence)・親の健康面において
他のグループより高いスコアを示した。MRの母親は親としての役割や配偶者との関係
が制限されることに関して低い値を示した。子どもの精神遅滞の程度と顕著な行動は
親のストレスと正の相関があるが、家庭の社会経済的レベルや子どもの年齢とは関連
は見られない。
結論:
一般的に言って、精神遅滞の子どもの母親は(病因に関わらず)正常児の母親に比べ
て自分の子どもを受け入れることが難しい。症候群の行動的表現型に起因する特定の
行動的な問題も同様に母親の精神的ストレスに影響を与えている。
(2002年1月)
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