統合ネットワーク分析の結果、ウィリアムズ症候群に関連する生物学的経路が明らかになった
Integrative network analysis reveals biological pathways associated with Williams syndrome.
木村 亮1)、Swarup V2)、富和 清隆3,4,5)、Gandal MJ2)、Parikshak NN2)、船曳 康子6,7)、中田 昌利1)、粟屋 智就1,3)、Kato T3)、Iida K8)、岡崎 伸4)、松島 佳苗9)、加藤 寿宏9)、村井 俊哉7)、平家 俊男3)、Geschwind DH2)、萩原 正敏1)
Author information:
1.京都大学大学院 医学研究科医学専攻 生体構造医学講座形態形成機構学
2.Program in Neurogenetics, Department of Neurology, David Geffen School of Medicine, University of California Los Angeles, Los Angeles, CA, USA.
3.京都大学大学院 医学研究科医学専攻 発生発達医学講座発達小児科学
4.大阪市立総合医療センター小児神経内科
5.東大寺福祉療育病院
6.京都大学大学院 医学研究科医学専攻 高次脳科学講座認知行動脳科学
7.京都大学大学院 医学研究科医学専攻 脳病態生理学講座精神医学
8.京都大学大学院 医学研究科医学研究支援センター
9.京都大学大学院 医学研究科人間健康科学系専攻 作業療法学講座
J Child Psychol Psychiatry. 2018 Oct 25. doi: 10.1111/jcpp.12999. [Epub ahead of print]
背景:
ウィリアムズ症候群は神経発達障害であり、染色体7q11.23領域の半接合欠失を原因として、様々な身体的、認知的、行動的特徴を有する。しかし、この様々な表現型の遺伝子的基盤は明らかになっていない本研究では、これらの複雑な表現型の根底にある遺伝子的手がかりを特定する。
手法:
神経行動学的な機能をウィリアムズ症候群患者と健康な対照群で評価した。総RNAを末梢血から抽出しマイクロアレイ分析、RNA配列解析、定量的リアルタイムPCRを行った。重み付き遺伝子発現ネットワーク分析を行い、疾患特有の中間表現型と関係する特定の変異を同定した。ウィリアムズ症候群に関係する個々のモジュールを機能的に翻訳するため、 ジーンオントロジーと疾患関連遺伝子の集積を調べた。ウィリアムズ症候群におけるトランスクリプトームの調節をよりよく説明するために、マイクロRNAの発現プロフィールとマイクロRNAの同時発現ネットワークを調査した。
結果:
我々の分析によれば、有意にウィリアムズ症候群の中間表現型に関連する同時発現モジュールを4種類同定した。注目すべきことは、増加が見られたウィリアムズ症候群に関係する3種類のモジュールは7q11.23領域外に存在する遺伝子だけで構成されていた。これらはB細胞の活性化、RNAプロセシング、RNA輸送に関連する遺伝子で優位に集積されていた。BCL11Aは、発話障害や知的障害に関連することで知られているが、ウィリアムズ症候群のトップモジュールに含まれるハブ遺伝子の一つとして同定された。最後に、これらの特定の上方制御されたmRNA同時発現モジュールが逆に下方制御されたウィリアムズ症候群に関連した特定のmiRNA同時発現モジュールに関連していることが明らかになった。
結論:
7q11.23領域外に存在する遺伝子を含むmRNA/miRNAネットワークの調節不全はウィリズ症候群患者に診られる複雑な表現型に関係している可能性がある。
【訳者注】論文の著者による解説記事はこちらに。
(2018年11月)
−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−
この研究の成果の一端は「バーキットリンパ腫になる可能性を有するリスク要素としてのウィリアムズ症候群」にみられる。
(2019年1月)
−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−=−
目次に戻る