イヌの進化におけるヒトとイヌのコミュニケーションに関連する遺伝子の同定



Identification of genes associated with human-canine communication in canine evolution.

外池 亜紀子(1), 大滝 賢一(1), 寺内 豪(1), 小川 美里(1), 片山 真希(1), 坂田 日香里(1), 宮迫 史奈(1), 茂木 一孝(1)(2), 菊水 健史(1)(2), 永澤 美保 (3)(4).
Author information:
(1) 麻布大学獣医学部
(2) 麻布大学ヒトと動物の共生科学センター
(3) 麻布大学獣医学部 nagasawa@azabu-u.ac.jp.
(4) 麻布大学ヒトと動物の共生科学センター nagasawa@azabu-u.ac.jp.
Sci Rep. 2022 Jun 9;12(1):6950. doi: 10.1038/s41598-022-11130-x.

イヌ(イエイヌ:Canis familiaris)は最初に家畜化された動物であり、今日では数百の品種が存在する。家畜化の過程において、イヌは気性・行動・認知などの能力に対して強い淘汰を経験した。しかし、これらの能力に対する遺伝子的基礎は明らかになっていない。我々は古代犬種に注目し、社会的認知能力に関する犬種間の違いを調べた。問題解決課題において、古代犬種は他のヨーロッパ犬種に比べて、飼い主を振り返る傾向が少ないことが分かった。二者選択課題においては、古代犬種は正反応率やヒトのコミュニケーションジェスチャーを読む能力に差はなかった。オキシトシン、オキシトシン受容体、メラノコルチン2受容体、ウィリアムズ症候群責任遺伝子(WBSCR17)をイヌの家畜化に関連する候補遺伝子として遺伝子多型を調べた。メラノコルチン2受容体の1塩基多型が両課題に関連している一方、その他の多型が解決不可能課題と関連していた。このことは、糖質コルチコイド機能がイヌの家畜化の過程で認知能力を獲得することに関連していることを示唆する。

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訳者注: (2022年6月)



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