ウィリアムズ症候群患者では神経細胞および乏突起膠細胞DNAの非翻訳領域におけるメチル化の調節不全が大脳皮質の病理と発達に関連している
In individuals with Williams syndrome, dysregulation of methylation in non-coding regions of neuronal and oligodendrocyte DNA is associated with pathology and cortical development.
Trangle SS(1), Rosenberg T(2), Parnas H(2), Levy G(3), Bar E(1)(4), Marco A(#)(5), Barak B(#)(6)(7).
Author information:
(1)The School of Psychological Sciences, Faculty of Social Sciences, Tel Aviv University, Tel Aviv, 6997801, Israel.
(2)Neuro-Epigenetics Laboratory, Faculty of Agriculture, Food and Environment, The Hebrew University of Jerusalem, Rehovot, 7610001, Israel.
(3)Sagol School of Neuroscience, Tel Aviv University, Tel Aviv, 6997801, Israel.
(4)The School of Neurobiology, Biochemistry & Biophysics, Faculty of Life Sciences, Tel Aviv University, Tel Aviv, 6997801, Israel.
(5)Neuro-Epigenetics Laboratory, Faculty of Agriculture, Food and Environment, The Hebrew University of Jerusalem, Rehovot, 7610001, Israel. asaf.marco@mail.huji.ac.il.
(6)The School of Psychological Sciences, Faculty of Social Sciences, Tel Aviv University, Tel Aviv, 6997801, Israel. boazba@tauex.tau.ac.il.
(7)Sagol School of Neuroscience, Tel Aviv University, Tel Aviv, 6997801, Israel. boazba@tauex.tau.ac.il.
(#)Contributed equally
Mol Psychiatry. 2022 Dec 28. doi: 10.1038/s41380-022-01921-z. Online ahead of print.
ウィリアムズ症候群は神経発達疾患であり、ウィリアムズ症候群責任領域にある半接合微小欠失を原因とし、超社会性や神経認知異常を特徴とする。それにもかかわらず、ウィリアムズ症候群責任領域の欠失が、脳内でのエピジェネティック修飾に影響を与えているかどうか、またその程度は不明であり、誘発された病理的予後は大部分が不明なままである。前頭皮質のDNAメチル化を調べたところ、定型発達をした対照群と比較して、ウィリアムズ症候群患者のメチロームはゲノム全般に渡って破損している。驚くことに、可変メチル化部位はイントロンや遺伝子間座位を支配的にアノテートしており、神経の発達、可塑性、認知を調節する転写制御因子との結合領域の周囲に豊富に存在した。さらに、転写促進因子-転写開始配列間のインタラクトームデータを用いて、これらの座位の大部分がヒトの脳内で活性転写促進因子として、あるいはミエリン形成、乏突起膠細胞分化、認知、社会的行動に関係する転写制御ネットワークの対象となる遺伝子として機能していることを発見した。細胞に特異的なメチル化分析を行ったところ、神経細胞や乏突起膠細胞の活性転写促進因子におけるメチル化のパターンが異常であること、重要な神経細胞-グリア細胞間の相互作用に異常なパターンが存在することが明らかになった。これらはウィリアムズ症候群患者が障害を受けている部分である。最後に、ウィリアムズ症候群の患者と健康な対照群から採血した血液サンプルのメチル化プロフィールを比較し、本研究で得られた他のデータとも合わせて検討すると、ウィリアムズ症候群に関係する中間形質の仮想ターゲットが特定できた。これを使えばウィリアムズ症候群責任領域座位以外に存在するウィリアムズ症候群における脳のリスク要因となる遺伝子座を始めとしてその他の関連する病因を特定することが可能になる。結論として、我々の研究はウィリアムズ症候群患者の脳のメチロームの姿を描き出すとともに、これらの異常がどのようにして社会的行動や生理的異常に影響を与えているかを明らかする。さらなる拡張を行えば、これらの結果はウィリアムズ症候群を対象としたより良い診断とより洗練された治療ターゲットにつながる。
参考文献 No23「統合的DNAメチル化分析によってウィリアムズ症候群におけるANKRD30B遺伝子の役割候補が明らかになる」
(2023年1月)
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