「変則的なウィリアムズ」という疑問の解決につながる新しい研究



アメリカのウィリアムズ症候群協会(WSA)の会報に掲載されていた記事です。もとになった 論文は資料番号3−2−58 (ウィリアムズ症候群家系における150万塩基対の逆位多型)をご覧下さい。

(2002年3月)

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New Research begins to unravel the Mystery of "Atypical Williams"

Lucy Osborne, MD
"Heart to Heart", Volume 19 Number 1, January 2002, Page 5

ウィリアムズ症候群と診断された人は、ほとんどの場合第7染色体の一部分が欠けて います。この欠失範囲には少なくとも25種類の遺伝子が存在し、エラスチンを含むいくつ かの遺伝子はウィリアムズ症候群に見られる幅広い臨床症状に影響を与えています。この 欠失はその発生原因の故に、ほとんどのウィリアムズ症候群の人で同一です。欠失の両端 には1対の本立てのようなDNA断片が存在します。減数分裂(精子や卵子の細胞を作る) 時に染色体が対合する場合、第7染色体同士は配列が同じであることで相手を認識し合い ます。しかし「1対の本立て」がとても似ていることが混乱の原因となり、染色体が正しく 対合できず欠失につながります。最近、この「本立て」が原因となって、ウィリアムズ症 候群では欠失している部位が逆位になっている、すなわち左右逆になっている症例を発見 しました。この症例では遺伝子は欠失していませんが、染色体中で逆位になっている切れ 目の部分の影響で遺伝子に混乱を与えている可能性があります。

現在行われているウィリアムズ症候群の分子検査法はFISH(Fluorescence in situ hybridization)検査で、この検査は血液細胞中にウィリアムズ症候群領域が存在するか否 かを調べます。臨床的にウィリアムズ症候群と診断された患者の95%以上がFISH検査で陽 性となる一方で、明らかにウィリアムズ症候群の特徴を有しているにもかかわらず欠失を 持たない人も存在します。ウィリアムズ症候群の特徴がありながら欠失を持っていない人 の中の数人から、ウィリアムズ症候群領域の逆位を見つけました。この人達は発達遅滞・ ウィリアムズ症候群に似た顔貌・音に対する過敏・過度のなれなれしさ・歯の異常・斜視・ 多動・関節の異常などがありますが、大動脈弁上狭窄をはじめとする循環器系疾患はあり ません。逆位が特定の遺伝子の発現に影響を与えたため、これらの人々はウィリアムズ症 候群の症状の一部を呈していると我々は推測しています。つまり、欠失と同様逆位もウィ リアムズ症候群の原因になるということを示しています。逆位の検査を行えば、ウィリア ムズ症候群の分子的確定診断を下せる人がもっと増えるものと期待しています。

さらに我々はウィリアムズ症候群の典型的な欠失を有する子どもを持つ家族を調査し、 どちらの親の第7染色体が欠失して患児に渡されたかを調べました。12家族を調査し、そ のうちの3分の1(4家族)は欠失を起こした方の親に逆位が存在しました。親族にウィリ アムズ症候群の患者がいない人達にはこの逆位は見当たりませんでした。このことは、ウ ィリアムズ症候群領域の逆位を有していると染色体の欠失が発生しやすいということを示 唆している可能性があります。調査したサンプル数が非常に少ないので、ウィリアムズ症 候群領域の逆位を有しているとウィリアムズ症候群領域が欠失した子どもを持つリスクが 高くなるかどうか現段階では明言できません。我々は研究対象を広げるために、できる限 りたくさんのウィリアムズ症候群患者を持つ家族の調査を行える様に世界中の研究者に試 薬を送っています。これによって逆位に関連するリスクを推定し、遺伝カウンセラーやウ ィリアムズ症候群の家族に対して逆位の検査を行うように勧告を出せるようになります。 来年にはこれらを行えるように十分な情報が集まることを期待しています。

第7染色体        ====***123456789***====

欠失             ====***  (欠失)   ***====

逆位             ====***987654321***====

                            123456789:ウィリアムズ症候群領域
                            ***:「本立て」領域
この論文("A 1.5 million-base pair inversion polymorphism in families with Williams-Beuren syndrome")全文は、Nature Genetics, Volume 29, November 2001 に掲載されました。WSA本部オフィスあるいは Nature Geneticsから入手できます。



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