もし染色体の不適正塩基対にLCRがひとつしか含まれていない場合(図3参照)、染色体の重ね合わせ(register)がくるいます(嵌め合わせ開始位置がくるったジッパーのように)。染色体の対合が不適切になってしまうと、交差後の染色体も異常になります。一方は欠失(deletion)があり、もう片方は重複(duplication)があります。
図3 不適正塩基対
===ABC==(FKBP6)==(ELN)==(GTF21)==ABC===
↑
↓
---ABC--(FKBP6)--(ELN)--(GTF21)--ABC---
結果 重複
---ABC--(FKBP6)--(ELN)--(GTF21)--ABC==(FKBP6)==(ELN)==(GTF21)==ABC===
欠失
---ABC===
この過程は卵子や精子ができる際におこり、そのため、染色体対の片方のみが卵子や精子に渡されて胚の形成に影響を与えます。欠失した第7染色体を受け取った胚はウィリアムズ症候群になり、重複した第7染色体を受け取った胚はdup7q症候群(dup7q syndrome)になります。dup7q症候群にも精神遅滞がおこりますが、ウィリアムズ症候群ではありません。もし両方のLCRが不適正塩基対に含まれていた場合、欠失や重複はおこりませんが、遺伝子の並び順が反対になり、逆位(inversion)と呼ばれます(図4参照)。
図4 逆位
---ABC==(GTF21)==(ELN)==(FKBP6)==ABC---