craniosynostosisを伴ったWilliams' syndrome
本文中に出てくる英語の専門用語の日本語訳は次の通りです。
craniosynostosis=頭蓋縫合早期癒合症
sagittal suture=矢状縫合
scaphocephaly=舟状頭蓋症
infantile spasm=点頭てんかん
また、「craniosynostosisを伴ったWilliams' syndrome例は過去に2例のみの報告」のうちの一つは「3-5-05:ウィリアムズ症候群と頭蓋骨早期癒合症患者に発生した乳児性痙縮」
と思われます。
(2014年7月)
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三川 信之1)、Eric Arnaud2)、Junnu Leikola2)、佐藤 兼重3)
1)昭和大学医学部形成外科
2)Chirurgie Plastique Cranio-facial Unit, Hospital Necker Enfants Malades
3)千葉大学医学部形成外科
日本頭蓋顎顔面外科学会誌 第27巻2号(2011) 175ページ
【はじめに】
Williams' syndromeは、幼児期からの成長障害と知的発達障害、独特の妖精様の特異顔貌"elfin face"、大動脈弁上狭窄、末梢性肺動脈狭窄などの心血管系異常を主症状とする先天性奇形症候群である。今回われわれは、Williams' syndromeに合併症としてはまれなcraniosynostosisを伴った症例を経験したので報告した。
【症例】
患者は女児で在胎38週、体重2,570gで出生した。直後より肺動脈狭窄、高カルシウム血症、発達遅滞などが認められ、FISH(Fluorescence in situ hybridization)によって7番染色体q11.23の微細欠失が認められたため、Williams' syndromeと診断された。また成長に伴い、前額部突出、浮腫状の瞼、鼻根部平坦、上向きの鼻孔、長い人中、厚い口唇、小さい顎、歯牙形成異常などの特徴的な顔貌が認められ、頭部は前頭部を中心に突出する舟首様前額変形を呈する三角頭蓋であった。画像所見においても三角頭蓋と脳圧亢進を示す指圧痕が認められたため、2歳時に三角頭蓋に対する頭蓋形成術を施行した。手術後経過は順調であり、術後6年の現在、頭蓋形態は良好である。
【考察】
Williams' syndromeの頭蓋顔面領域における特徴は妖精様顔貌(elfin face)とよばれる特徴的な顔貌である。今回われわれは、合併症としてはきわめてまれなcraniosynostosisを伴ったWilliams' syndromeを経験した。両者の関連性は明らかではなく、craniosynostosisを伴ったWilliams' syndrome例は過去に2例のみの報告であり、それらはいずれもsagittal sutureの早期融合であるscaphocephalyであり、かつinfantile spasmを伴っていた。Cranio-synostosisの手術治療によって、Williams' syndromeの身体的・精神的発達が明らかに改善されたというデータはなく、今後は本症例を注意深く長期に観察するとともに、Williams' syndromeとcraniosynostosisとの関連性について遺伝子レベルでの探求が必要であると思われる。
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