障害のある子どもにみられる睡眠関連病態 − 障害種別にみた特徴と家族に与える影響 −
林 恵津子
埼玉県立大学保健医療福祉学部
特殊教育学研究 49(4) 425‐433,2011
障害のある子どもは、眠れない、睡眠覚醒リズムが乱れる、睡眠時の異常運動があるといったさまざまさ睡眠関連病態を高い割合で呈する。子どもの睡眠関連病態は、子どもの昼間の行動や気分に影響するばかりでなく、後の心身の発達にも影響する。また、家族の心身の健康にも影響するので、看過できない問題である。本稿では、障害種別ごとに、併存する睡眠関連病態を整理した。障害種別により、併存しやすい睡眠関連病態があることから、障害の背景にある神経機構と睡眠関連病態の背景にある神経機構に関連があることが示唆された。さらに、家族での睡眠関連病態への対処方法を整理し、その効果を示した。生活の最大の基礎である睡眠が確保できないと、親は子どもの将来を冷静かつ建設的に考えることが難しい。睡眠関連病態への迅速で丁寧な支援が期待される。
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2.染色体・遺伝子異常により生じる障害に伴う睡眠関連病態
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(3)ウィリアムズ症候群
ウィリアムズ症候群では、注意欠陥/多動性障害に似た落ち着きのなさが特徴的に認められる。Arens,Wright,Elliott,Zbao,Wang,Brown,Namey,and Kaplan(1998)はウィリアムズ症候群では寝つきが悪く、夜間睡眠の中途覚醒があり、朝の目覚めが悪い傾向を報告している。そして、そのような病状を呈する7名を対象に、睡眠PSG検査を行ったところ、7名全員に周期性四肢運動障害が頻発したことを報告した。周期性四肢運動障害とは、手や脚の不随意運動が睡眠中に連続して現れるもので、中途覚醒の原因となり、いったん目覚めると再入眠が難しいため夜間覚醒が長引き、朝の覚醒困難につながる。
ウィリアムズ症候群では、周期性四肢運動障害の存在を確かめたうえで、夜間中途覚醒への対応を考える必要があるだろう。注意欠陥/多動性障害の項で後述するが、注意欠陥/多動性障害でも周期性四肢運動障害が報告されており、関連性が示唆される。
(2014年10月)
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