Williams 症候群の模写障害 −健常児との比較−



資料番号3-9-171:「Williams 症候群の模写障害 −角の誤形成−」の継続研究成果の報告と思われる。

(2010年1月)

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永井 知代子1), 乾 敏郎1)2), 岩田 誠3)
1) 科学技術振興機構 ERATO 浅田共創知能システムプロジェクト
2) 京都大学大学院情報学研究科
3) 東京女子医科大学神経内科
日本認知心理学会第7回大会(2009年)

我々はこれまで,Williams症候群(WS)の模写障害には,短時間に視覚対象の特徴を把握する能力の障害が関与することを指摘してきた。しかしこの能力は健常児でも低いことが知られている。そこで,平均年齢18歳のWSの描画が,描画レベルは同等といわれる健常5-6歳児と同じなのかどうかを知るため,正方形・菱形・正五角形・正六角形・凹を含む多角形・波線直交・ジグザグ直交図形を見本として,タブレットPC上に0.5, 2, 5s間見本をランダムに呈示してトレースさせ比較した。全体の成績はWSが有意に低く,中でも六角形・五角形の成績が不良であった。呈示時間ごとの成績をみると,0.5s呈示では差がないが,2s,5sと呈示時間が長くなると健常児は有意に成績が伸びるのに対しWSではほとんど改善がみられなかった。描画要素ごとの成績では,図形の角数や角度の成績が有意に不良であった。以上より,WSの模写障害は全般的な発達遅れだけでは説明できず,図形の特徴点記憶に特異的な障害が示唆された。



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